穀物不使用のドッグフードは心疾患を引き起こす?
近年、獣医が心臓肥大のある犬を扱う症例が急増しています。
拡張型心筋症(DCM)とも呼ばれるこの疾患は、深刻で、多くの場合致命的となる心臓病です。
<穀物不使用のドッグフードと心臓病に関するFDAの調査>
穀物不使用の餌を与えられた犬がDCMを発症するケースが多いことを考えると、このフードが疾患に何かしらの役割を果たしている可能性が考えられます。
症例数の増加を受け、米国食品医薬品局(FDA)は、食事やその他要因がペットのDCM発症リスクに繋がる可能性について、調査を開始しました。
その後FDAは、研究者の調査結果を要約する一連の報告を発表しています。
この調査結果と自身のペットに関わりや、ペットにとって安全なフードについて疑問に思うでしょう。
穀物不使用のフードは、犬の健康に悪いのでしょうか?
近年DCM症例が急上昇している原因は何なのでしょうか?
FDAの調査はまだ進行中ですが、現状知っておくべきことや、この深刻な疾患に関する最新ニュースから必要な情報をピックアップして以下に紹介します。
<拡張型心筋症とは?>
DCMとは、心臓が肥大し、心筋が薄くなることを特徴とする心疾患です。
上記の変化が起こることで心臓が血液を送り出す能力が弱まり、これにより疾患が進行しやすく、また最終的に心不全に陥りやすくなります。
拡張型心筋症は、犬と猫どちらも発症し得る病気です。
犬のDCMは従来、中年期から更年期の犬、特にドーベルマン、グレートデーン、アイリッシュウルフハウンドなどの大型犬が発症していました。
特定の犬種が発症しやすいことから、DCMには遺伝的原因があると考えられてきました。
しかし猫の場合、DCMはタウリンの不足によって引き起こされます。
タウリンは体内で合成できず、食事で摂取する必要があるアミノ酸です。
研究者によってタウリン不足が猫のDCMの原因であることがわかると、猫が十分な量を摂取できるように、各製造業者は市販のキャットフードにタウリンを追加し始めました。
結果として、猫のDCMは今では非常に稀となりました。
このことで、犬のDCM発症リスクに置いても食事が関係するのではないかという疑問が浮かびます。
<犬のDCMは食事が原因?>
過去数年間、犬のDCM発症数はこれまでにないペースで増えています。
また、近年の症例では、大型犬種のみでなく、これまでDCMリスクが高いとは考えられていなかった犬を含む、幅広い犬種の発症例がみられています。
このため、ペットが発症するこの疾患には、遺伝以外の要因があると考えられます。
これに応じて、最近の犬のDCM症例について調査するため、FDAは臨床検査室や心臓専門の獣医、栄養士と協力しました。
FDAは獣医に対し、犬および猫のDCM症例を全て報告するよう依頼しました。
これまで計560件の犬のDCM症例が報告されており、FDAはこれらの症例を基に、疾患の要因となった可能性のある傾向を探しています。
特に、血液検査、診断結果(症状や心エコー測定値など)、食事の他、別の要因にも焦点を当てています。
<研究では穀物不使用のフードが指摘されている?>
遺伝的なDCMとは異なり、最近のDCM症例は、子犬から老犬まで、幅広い犬種が発症しています。
DCM発症報告が最も多い犬種には、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、および雑種が含まれます。
FDAが食事要因を調べたところ、DCMを患う犬の90%以上が「穀物不使用」もしくは「穀物無添加」の記載のあるフードを与えられていたことがわかりました。
こうしたフードには穀物の代わりに、主成分としてエンドウ豆および/またはレンズ豆が含まれていました。
配合割合の低い食品としては、ジャガイモやサツマイモが主要な成分として記載されていました。
研究者は、タンパク質源、ミネラル、炭水化物、澱粉など、フードに含まれるその他あらゆる成分を調べましたが、いずれも病気を進行させる傾向は見られませんでした。
FDAによると、報告症例の犬の餌には「高濃度/割合のエンドウ豆、ヒヨコ豆、レンズ豆、および/またはあらゆる種類のイモ」が含まれていたといい、これは穀物不使用フードによく含まれる材用であるものの、穀物入りのフードにも同様に含まれているため、あまり意味がありません。
<猫のDCMにおけるタウリンの役割>
研究者は、最近みられる症例の原因として、タウリン不足も可能性があるとして調べました。
今の所、決定的な結果はみられていません。
報告では、タウリン不足があったのは検査対象となった犬の半数以下であり、半数のタウリンレベルは正常でした。
しかし他の研究では、特に特定の大型犬において、DCMにおけるタウリンの役割が大きくなる可能性が示唆されています。
とある研究では、DCMを患う24頭のゴールデンレトリバーにタウリン不足があり、これらの犬の大部分が診断までに穀物不使用フードを与えられていたことがわかっています。
幸いなことに、犬に心臓の薬とタウリンサプリメントを与え、穀物入りフードに切り替えたことにより、ほとんどの犬の心臓病は解消しました。
<他の要因が関係している?>
FDA報告書における現状最大の発見は、DCMを患う犬のほとんど全てが穀物不使用フードを与えられていたということです。
よって、穀物不使用フードとペットの心疾患の間には強い関連があることが考えられます。
FDAはまだ、疾患の形成に関する正確なメカニズムを明らかにできていません。
全ての可能性を網羅するため、FDAと提携機関は、DCMの発症に寄与する可能性のある、遺伝や重金属およびその他毒素への曝露といったその他潜在的な要因について調査を続けています。
<穀物不使用フードを与えても安全か?>
FDAによる犬のDCMに関する研究はいまだ進行中であり、FDAのQ&Aページでは以下のように述べられています。
「現時点では、これまで集めた情報だけに基づいた食事の推奨は行っていません。」
しかし、特定の成分を含んだフードの投与に不安がある場合、かかりつけの獣医に相談することで、それぞれのペットに合った、最も適切なフードの決定に役立つかもしれません。
近年穀物不使用のペットフードが一般的になってきていますが、ペットの穀物過敏症やアレルギーは非常に稀であることを心に留めておくことが大切です。
ほとんどのペットにとって、穀物不使用フードは必要ないのです。
どんなフードを与えているかによらず、もしペットに咳や呼吸困難、衰弱、虚脱などの心臓障害の徴候が見られた場合は、できるだけ早く獣医に連絡する必要があります。
出典 PetMD『Is Grain-Free Dog Food Causing Heart Disease?』(2019年12月17日に利用)
https://www.petmd.com/dog/nutrition/grain-free-dog-food-causing-heart-disease?icn=HP-DOG%20NUTRITION&icl=Is%20Grain-Free%20Dog%20Food%20Causing%20Heart%20Disease?
拡張型心筋症(DCM)とも呼ばれるこの疾患は、深刻で、多くの場合致命的となる心臓病です。
<穀物不使用のドッグフードと心臓病に関するFDAの調査>
穀物不使用の餌を与えられた犬がDCMを発症するケースが多いことを考えると、このフードが疾患に何かしらの役割を果たしている可能性が考えられます。
症例数の増加を受け、米国食品医薬品局(FDA)は、食事やその他要因がペットのDCM発症リスクに繋がる可能性について、調査を開始しました。
その後FDAは、研究者の調査結果を要約する一連の報告を発表しています。
この調査結果と自身のペットに関わりや、ペットにとって安全なフードについて疑問に思うでしょう。
穀物不使用のフードは、犬の健康に悪いのでしょうか?
近年DCM症例が急上昇している原因は何なのでしょうか?
FDAの調査はまだ進行中ですが、現状知っておくべきことや、この深刻な疾患に関する最新ニュースから必要な情報をピックアップして以下に紹介します。
<拡張型心筋症とは?>
DCMとは、心臓が肥大し、心筋が薄くなることを特徴とする心疾患です。
上記の変化が起こることで心臓が血液を送り出す能力が弱まり、これにより疾患が進行しやすく、また最終的に心不全に陥りやすくなります。
拡張型心筋症は、犬と猫どちらも発症し得る病気です。
犬のDCMは従来、中年期から更年期の犬、特にドーベルマン、グレートデーン、アイリッシュウルフハウンドなどの大型犬が発症していました。
特定の犬種が発症しやすいことから、DCMには遺伝的原因があると考えられてきました。
しかし猫の場合、DCMはタウリンの不足によって引き起こされます。
タウリンは体内で合成できず、食事で摂取する必要があるアミノ酸です。
研究者によってタウリン不足が猫のDCMの原因であることがわかると、猫が十分な量を摂取できるように、各製造業者は市販のキャットフードにタウリンを追加し始めました。
結果として、猫のDCMは今では非常に稀となりました。
このことで、犬のDCM発症リスクに置いても食事が関係するのではないかという疑問が浮かびます。
<犬のDCMは食事が原因?>
過去数年間、犬のDCM発症数はこれまでにないペースで増えています。
また、近年の症例では、大型犬種のみでなく、これまでDCMリスクが高いとは考えられていなかった犬を含む、幅広い犬種の発症例がみられています。
このため、ペットが発症するこの疾患には、遺伝以外の要因があると考えられます。
これに応じて、最近の犬のDCM症例について調査するため、FDAは臨床検査室や心臓専門の獣医、栄養士と協力しました。
FDAは獣医に対し、犬および猫のDCM症例を全て報告するよう依頼しました。
これまで計560件の犬のDCM症例が報告されており、FDAはこれらの症例を基に、疾患の要因となった可能性のある傾向を探しています。
特に、血液検査、診断結果(症状や心エコー測定値など)、食事の他、別の要因にも焦点を当てています。
<研究では穀物不使用のフードが指摘されている?>
遺伝的なDCMとは異なり、最近のDCM症例は、子犬から老犬まで、幅広い犬種が発症しています。
DCM発症報告が最も多い犬種には、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、および雑種が含まれます。
FDAが食事要因を調べたところ、DCMを患う犬の90%以上が「穀物不使用」もしくは「穀物無添加」の記載のあるフードを与えられていたことがわかりました。
こうしたフードには穀物の代わりに、主成分としてエンドウ豆および/またはレンズ豆が含まれていました。
配合割合の低い食品としては、ジャガイモやサツマイモが主要な成分として記載されていました。
研究者は、タンパク質源、ミネラル、炭水化物、澱粉など、フードに含まれるその他あらゆる成分を調べましたが、いずれも病気を進行させる傾向は見られませんでした。
FDAによると、報告症例の犬の餌には「高濃度/割合のエンドウ豆、ヒヨコ豆、レンズ豆、および/またはあらゆる種類のイモ」が含まれていたといい、これは穀物不使用フードによく含まれる材用であるものの、穀物入りのフードにも同様に含まれているため、あまり意味がありません。
<猫のDCMにおけるタウリンの役割>
研究者は、最近みられる症例の原因として、タウリン不足も可能性があるとして調べました。
今の所、決定的な結果はみられていません。
報告では、タウリン不足があったのは検査対象となった犬の半数以下であり、半数のタウリンレベルは正常でした。
しかし他の研究では、特に特定の大型犬において、DCMにおけるタウリンの役割が大きくなる可能性が示唆されています。
とある研究では、DCMを患う24頭のゴールデンレトリバーにタウリン不足があり、これらの犬の大部分が診断までに穀物不使用フードを与えられていたことがわかっています。
幸いなことに、犬に心臓の薬とタウリンサプリメントを与え、穀物入りフードに切り替えたことにより、ほとんどの犬の心臓病は解消しました。
<他の要因が関係している?>
FDA報告書における現状最大の発見は、DCMを患う犬のほとんど全てが穀物不使用フードを与えられていたということです。
よって、穀物不使用フードとペットの心疾患の間には強い関連があることが考えられます。
FDAはまだ、疾患の形成に関する正確なメカニズムを明らかにできていません。
全ての可能性を網羅するため、FDAと提携機関は、DCMの発症に寄与する可能性のある、遺伝や重金属およびその他毒素への曝露といったその他潜在的な要因について調査を続けています。
<穀物不使用フードを与えても安全か?>
FDAによる犬のDCMに関する研究はいまだ進行中であり、FDAのQ&Aページでは以下のように述べられています。
「現時点では、これまで集めた情報だけに基づいた食事の推奨は行っていません。」
しかし、特定の成分を含んだフードの投与に不安がある場合、かかりつけの獣医に相談することで、それぞれのペットに合った、最も適切なフードの決定に役立つかもしれません。
近年穀物不使用のペットフードが一般的になってきていますが、ペットの穀物過敏症やアレルギーは非常に稀であることを心に留めておくことが大切です。
ほとんどのペットにとって、穀物不使用フードは必要ないのです。
どんなフードを与えているかによらず、もしペットに咳や呼吸困難、衰弱、虚脱などの心臓障害の徴候が見られた場合は、できるだけ早く獣医に連絡する必要があります。
出典 PetMD『Is Grain-Free Dog Food Causing Heart Disease?』(2019年12月17日に利用)
https://www.petmd.com/dog/nutrition/grain-free-dog-food-causing-heart-disease?icn=HP-DOG%20NUTRITION&icl=Is%20Grain-Free%20Dog%20Food%20Causing%20Heart%20Disease?