聴力喪失と失明により認知症発症率が高まる
ある研究では、聴覚と視覚の両方に障害を生じることが、認知症の発症率に与える影響を調べています。
これまで研究者らは、聴覚障害と視覚障害を個別に、認知症発症率の増加に関連付けてきました。
しかし、新しい研究によると、両方の障害がある場合、認知症を発症する可能性が大幅に上昇することがわかりました。
聴覚障害と視覚障害の両方を患う人は、認知症を発症するリスクが86%増加します。
「高齢者の視覚と聴覚を評価することで、認知症とアルツハイマー病の発症リスクがある個人を予測できるかもしれません。このことは、アルツハイマー病の予防試験に参加する被験者の特定の他、視力や聴覚低下を治療することで認知症リスクを改善できるかどうかにも影響します。」
–ワシントン大学の主任研究者、フィリップ・H・ワン氏
<以前の研究データを転用する>
「高齢者の二重感覚障害とGEM研究による認知症リスク(Dual sensory impairment in older adults and risk of dementia from the GEM Study)」と名付けられたこの研究は、アルツハイマー病と認知症:診断、評価、疾患のモニタリング(Alzheimer’s & Dementia: Diagnosis, Assessment & Disease Monitoring)に掲載されています。
この研究によると、70歳以上の約33%が聴覚障害を、約18%が視覚障害を経験するといいます。
状態は年齢とともに悪化するため、研究者は、難聴及び視力低下の進行と、個人の機能喪失および死亡率の間に相関関係があると考えています。
以前の研究では、聴覚障害または視覚障害と認知症の発症との関連性はそれほど明確ではありませんでした。
2つの主要な理論では、これらの特定の障害が、認知症を引き起こす同様の身体的プロセスに起因すること、もしくは聴覚および視覚障害が社会的孤立感やうつ病、運動不足の増加につながり、それぞれの障害が認知症を引き起こす可能性があることが示されています。
新しい研究では、両方の障害を同時に発症することによる影響を調べました。
同研究では、これら2つの障害の組み合わせを「二重感覚障害」と呼んでいます。
「これまでのほとんどの研究は、聴覚と視覚の障害に個別に焦点を当ててきましたが、認知症リスクに対する聴覚および視覚の障害、いわゆる二重感覚障害(DSI)の組み合わせによる影響は判っていません。」
DSIが認知症発症に与える影響を調査するため、研究者らは、高齢者の認知症予防におけるイチョウの効果を調査した二重盲検無作為化比較試験である『Gingko Evaluation of Memory(GEM)研究』で収集されたデータを分析しました。
GEM研究の対象者は75歳以上の高齢者であり、研究開始時点では認知機能が正常、もしくは軽度の認知症があるのみでした。
研究者たちは被験者を8年間に渡って調査しました。
研究では各被験者の聴覚及び視力に関する自己申告データを収集することに加え、被験者のフォローアップ検査では認知症の進行具合を調査しました。
<DSIと認知症リスク>
ワン氏と彼の同僚研究者が調査した最終的なデータセットは、2,051人の被験者で構成されていました。
内1,480人は、聴力にも視覚にも障害がありませんでした。
14.9%からは視覚障害が、7.8%からは難聴が報告されました。
DSIを患っていたのはわずか5.1%、つまり104人のみでした。
聴覚障害や視覚障害がなかった被験者と比較して、DSIを報告した被験者は男性であり、その他併存疾患があり、喫煙者および飲酒者である可能性が高くなりました。
GEM研究の追跡調査では、認知症を発症する可能性として、次のことが明らかになりました。
聴覚障害や視力低下を報告しなかった人の14.3%が認知症を発症しました。
単一の機能障害を報告した人の16.9%が認知症を発症しました。
DSIを患う人の28.8%が認知症を発症しました。
聴覚障害と視覚障害の両方を患う人は、これらの障害のない人の2倍近く、認知症の発症率が高くなりました。
しかし、調査結果によると、DSIを患う個人の認知症のリスク増加と、聴覚のおよび視覚障害の重症度との関連は少しだけでした。
重度のDSIに分類された人は、認知症の発症リスクが最も高くなった一方、軽度のDSIに分類された人の認知症リスクも非常に高い結果となりました。
<さまざまな形の認知症リスク>
研究者らは、DSIと3種類の認知症(あらゆる原因による認知症、アルツハイマー関連認知症、血管性認知症)との関連性を分析しました。
アルツハイマー病関連の認知症を発症する可能性は、さらに高くなります。
この研究では、DSIを患う人は、障害のない人よりもアルツハイマー病の発症率が112%高いことが示されています。
DSIと血管性認知症の関連については、ワン氏と彼の同僚研究者によって発見されていません。
<研究の意味>
研究の結論として、高齢者の聴力および視覚障害の軽減に努めることで、認知症の発症を遅らせる、もしくは阻止できる可能性があることが示唆されています。
著者らは、「感覚障害の正確な役割を特定し、手術や知覚補助具/装置/プロテーゼなどで感覚機能を改善する治療を施すことによりこのリスクを修正できるかどうかを判断するためには、さらなる研究が必要だ」と結論付けています。
研究著者らは、高齢者人口が増えるにつれに、高齢者の認知症蔓延への対処がより緊急になっていると付け加えています。
彼らは、次のように記述しています。
「認知症に関する公衆衛生上の負担は今後30年間で増加するため、高齢者の視覚および聴覚機能の評価は、認知症発症リスクが高い患者の特定に役立つ可能性があります。」
出典 2020年7月21日更新 Reuters『What you need to know about the coronavirus right now』 (2020年7月22日に利用)
https://www.medicalnewstoday.com/articles/hearing-plus-vision-loss-increases-the-odds-of-dementia
これまで研究者らは、聴覚障害と視覚障害を個別に、認知症発症率の増加に関連付けてきました。
しかし、新しい研究によると、両方の障害がある場合、認知症を発症する可能性が大幅に上昇することがわかりました。
聴覚障害と視覚障害の両方を患う人は、認知症を発症するリスクが86%増加します。
「高齢者の視覚と聴覚を評価することで、認知症とアルツハイマー病の発症リスクがある個人を予測できるかもしれません。このことは、アルツハイマー病の予防試験に参加する被験者の特定の他、視力や聴覚低下を治療することで認知症リスクを改善できるかどうかにも影響します。」
–ワシントン大学の主任研究者、フィリップ・H・ワン氏
<以前の研究データを転用する>
「高齢者の二重感覚障害とGEM研究による認知症リスク(Dual sensory impairment in older adults and risk of dementia from the GEM Study)」と名付けられたこの研究は、アルツハイマー病と認知症:診断、評価、疾患のモニタリング(Alzheimer’s & Dementia: Diagnosis, Assessment & Disease Monitoring)に掲載されています。
この研究によると、70歳以上の約33%が聴覚障害を、約18%が視覚障害を経験するといいます。
状態は年齢とともに悪化するため、研究者は、難聴及び視力低下の進行と、個人の機能喪失および死亡率の間に相関関係があると考えています。
以前の研究では、聴覚障害または視覚障害と認知症の発症との関連性はそれほど明確ではありませんでした。
2つの主要な理論では、これらの特定の障害が、認知症を引き起こす同様の身体的プロセスに起因すること、もしくは聴覚および視覚障害が社会的孤立感やうつ病、運動不足の増加につながり、それぞれの障害が認知症を引き起こす可能性があることが示されています。
新しい研究では、両方の障害を同時に発症することによる影響を調べました。
同研究では、これら2つの障害の組み合わせを「二重感覚障害」と呼んでいます。
「これまでのほとんどの研究は、聴覚と視覚の障害に個別に焦点を当ててきましたが、認知症リスクに対する聴覚および視覚の障害、いわゆる二重感覚障害(DSI)の組み合わせによる影響は判っていません。」
DSIが認知症発症に与える影響を調査するため、研究者らは、高齢者の認知症予防におけるイチョウの効果を調査した二重盲検無作為化比較試験である『Gingko Evaluation of Memory(GEM)研究』で収集されたデータを分析しました。
GEM研究の対象者は75歳以上の高齢者であり、研究開始時点では認知機能が正常、もしくは軽度の認知症があるのみでした。
研究者たちは被験者を8年間に渡って調査しました。
研究では各被験者の聴覚及び視力に関する自己申告データを収集することに加え、被験者のフォローアップ検査では認知症の進行具合を調査しました。
<DSIと認知症リスク>
ワン氏と彼の同僚研究者が調査した最終的なデータセットは、2,051人の被験者で構成されていました。
内1,480人は、聴力にも視覚にも障害がありませんでした。
14.9%からは視覚障害が、7.8%からは難聴が報告されました。
DSIを患っていたのはわずか5.1%、つまり104人のみでした。
聴覚障害や視覚障害がなかった被験者と比較して、DSIを報告した被験者は男性であり、その他併存疾患があり、喫煙者および飲酒者である可能性が高くなりました。
GEM研究の追跡調査では、認知症を発症する可能性として、次のことが明らかになりました。
聴覚障害や視力低下を報告しなかった人の14.3%が認知症を発症しました。
単一の機能障害を報告した人の16.9%が認知症を発症しました。
DSIを患う人の28.8%が認知症を発症しました。
聴覚障害と視覚障害の両方を患う人は、これらの障害のない人の2倍近く、認知症の発症率が高くなりました。
しかし、調査結果によると、DSIを患う個人の認知症のリスク増加と、聴覚のおよび視覚障害の重症度との関連は少しだけでした。
重度のDSIに分類された人は、認知症の発症リスクが最も高くなった一方、軽度のDSIに分類された人の認知症リスクも非常に高い結果となりました。
<さまざまな形の認知症リスク>
研究者らは、DSIと3種類の認知症(あらゆる原因による認知症、アルツハイマー関連認知症、血管性認知症)との関連性を分析しました。
アルツハイマー病関連の認知症を発症する可能性は、さらに高くなります。
この研究では、DSIを患う人は、障害のない人よりもアルツハイマー病の発症率が112%高いことが示されています。
DSIと血管性認知症の関連については、ワン氏と彼の同僚研究者によって発見されていません。
<研究の意味>
研究の結論として、高齢者の聴力および視覚障害の軽減に努めることで、認知症の発症を遅らせる、もしくは阻止できる可能性があることが示唆されています。
著者らは、「感覚障害の正確な役割を特定し、手術や知覚補助具/装置/プロテーゼなどで感覚機能を改善する治療を施すことによりこのリスクを修正できるかどうかを判断するためには、さらなる研究が必要だ」と結論付けています。
研究著者らは、高齢者人口が増えるにつれに、高齢者の認知症蔓延への対処がより緊急になっていると付け加えています。
彼らは、次のように記述しています。
「認知症に関する公衆衛生上の負担は今後30年間で増加するため、高齢者の視覚および聴覚機能の評価は、認知症発症リスクが高い患者の特定に役立つ可能性があります。」
出典 2020年7月21日更新 Reuters『What you need to know about the coronavirus right now』 (2020年7月22日に利用)
https://www.medicalnewstoday.com/articles/hearing-plus-vision-loss-increases-the-odds-of-dementia