脱毛の薬は、血管をしなやかにし重要臓器も保護
医療誌『American Journal of Physiology』のオンライン版で発表された実験モデル研究、「心臓および循環生理学」によれば、
脱毛を遅らせ、発毛を刺激する薬は硬くなった血管に伸縮性をもたらし、脳などの重要臓器への血流を改善する可能性があります。
エラスチンと呼ばれるタンパク質の働きにより、若く健康な人間や他の哺乳動物の動脈は簡単に伸びます。
エラスチンは、発育中にのみ生成され老化とともにゆっくり失われます。
高齢者では、エラスチンが失われ動脈が硬くなります。
硬くなった動脈は高血圧の発症や、ひいては突然死、脳卒中、心筋梗塞および認知機能低下のリスクを著しく高めます。
成人におけるほとんどの治療戦略は血圧を下げることを目的としています。
今日まで、成熟したヒト組織におけるエラスチンの沈着を増加させる薬物療法はありません。
「我々は、ウィリアムズ - ビューレン症候群(WS)や上大静脈狭窄症(SVAS)などの遺伝的状態が、
発達中の動脈においてエラスチンのレベルを異常に下げることを知っています。高齢者となるとまた突然死や脳卒中の危険性が高いことも。」
と共著者のマイケル・ミッシュ・ シューケット博士は述べています。
「WSまたはSVASではエラスチンが十分しなかやでない細い動脈で、重要な臓器への血流が減少すると考えていました。
成人で良く行われる単純に高血圧を低下させる治療戦略は、臓器灌流をさらに損なうため、
WSまたはSVASの子供に対して使用するのはあまり望ましくありません。
そのため、ミノキシジルと呼ばれる薬が血圧を下げるだけでなく、動脈を弛緩させ、それらの直径を広げ、
それにより臓器灌流を改善するのに役立つかどうかをテストしました。」
とシューケット博士は付け加えました。
シューケット博士と共同研究者のベス・A・コゼル博士は、ワシントン大学医学部(WUSM)において研究と実験を共同で行いました。
研究チームの研究原稿はシューケット博士がChildren's National Health System(子供の国民健康システム)に加わった後に
完成し出版されました。
ミノキシジルは肌に適用したときに髪の成長を向上させる可能性が最もよく知られています。
別の処方で、ミノキシジルは、時々他の薬に応答がなかった高血圧の治療に経口で処方されます。
以前の研究は、ミノキシジルが成熟組織においてさえ、エラスチンの沈着を増加させる可能性を示唆していました。
研究チームは、高血圧症およびWSおよびSVASに関連した慢性血管硬化の実験モデルで研究を行いました。
彼らは、超音波画像診断と磁気共鳴映像に基づく動脈スピンラベリングを用いて、ミノキシジルが血管の力学、
頸動脈と脳の血流、および遺伝子発現に与える影響を評価しました。
この研究の治療群の子供たちには、離乳してから月齢3ヶ月まで、飲料水を介して毎日、体重1kgあたり20mgのミノキシジルが投与されました。
2番目の治療グループも3ヶ月間ミノキシジルの投与を受けましたが、投薬が中止された1ヶ月後の月齢4ヶ月で分析されました。
遺伝子発現実験のために、前臨床モデルではミノキシジルの投与を2週間受けました。
「ミノキシジルは血圧を低下させるだけでなく、動脈の直径を増大させ、頸動脈と脳の血流を回復させました。
ミノキシジルはまた機能的な動脈硬化を減少させ、動脈のエラスチン含量を増加させました。」
と博士は言います。
「同様に重要なことに、これらの有益な変化は、薬がもはや血流中になくなった後も、数週間持続したということです。」
持続的な改善およびエラスチン遺伝子発現の増加は、ミノキシジル治療が硬直動脈の再造形を助け得ることを示唆しています。
研究チームは、ヒトの末梢臓器への血流の変化を確認し、エラスチン不全によって影響を受ける他の重要な血管床(心臓、腎臓、肺、腸など)
での血流の違いを評価するために、更なる臨床試験が必要であると述べています。
【以下のウェブサイトより引用】