脳のコンピューターシミュレーションにより、脳卒中生存者の言語回復を予測
ボストン大学の研究チームは、言語と音声が脳内でどのように処理されるか、そして、脳卒中、外傷または別の種類の脳損傷によって引き起こされる脳損傷によりコミュニケーション能力を失った人々を最も適切にリハビリする方法の開発に取り組んでいます。
このタイプの言語喪失は失語症と呼ばれ、言語の生成と処理に関与する脳の部分への損傷によって引き起こされる長期的な神経障害であり、米国で 100 万人以上が疾患しています。
「これは大きな問題です。」
と、ボストン大学失語症研究所の所長であるスワティ・キラン氏は言います。
「これは、私たちの研究室が複数のレベルで取り組んでいることです。」
過去 10 年間、キラン氏と彼女のチームは、言語療法によって人々の言語スキルが向上するにつれて脳がどのように変化するかを調査してきました。
最近では、治療を開始する前であっても、その人の改善能力を予測する新しい方法が開発されました。
サイエンティフィック レポート(Scientific Reports)に掲載された新しい論文の中で、ボストン大学とテキサス大学オースティン校のキラン氏との共同研究者は、英語とスペイン語の両方を流暢に話すヒスパニック系の患者、特に長期の言語喪失のリスクがある失語症患者のグループでの言語回復を、洗練された脳のコンピューター モデルを使用し予測できると報告しています。
彼らは、この発見が言語療法の分野と失語症となってしまった脳卒中からの生還者の治療において流れを変えるものになる可能性があると述べています。
「この 論文は、計算モデリングを使用して、実際に十分なサービスを受けていない神経疾患を患う人々におけるリハビリテーションの結果を予測しています。」
とキラン氏は言います。
米国では、ヒスパニック系住民の脳卒中からの生存者は、他のすべての人種や民族グループに比べて保険に加入する可能性がほぼ 半分と低いため、言語リハビリテーションを行うのに大きな困難を感じているとキラン氏は言います。
さらに、患者が自宅で複数の言語を話す場合でも、言語療法は 1 つの言語でしか利用できないことが多く、臨床医が患者がどの言語で治療を受けるべきかを優先することが困難です。
「この研究は、『この国で脳卒中を起こした人がいて、患者が2 つの言語を話す場合、どの言語で治療を受けるべきですか?』という質問から始まりました。」
とキラン氏は言います。
「英語でセラピーを受けると改善する可能性が高くなりますか?それともスペイン語ですか?」
業界初のこのテクノロジーは、言語障害のあるバイリンガル人の脳と、英語とスペイン語での治療に対する彼らの脳の反応をシミュレートする洗練されたニューラル ネットワーク モデルを使用することで、これらのニーズに対応します。
このテクノロジーは、治療中に対象とする最適な言語を特定し、治療後の結果を予測して、人がどの程度言語スキルを回復できるかを予測できます。
彼らは、それが治療された言語で治療効果を正確に予測したことを発見しました。
つまり、これらの計算ツールにより、医療提供者は可能な限り最良のリハビリテーション計画を行い患者を導くことができるということを意味しています。
「パンデミックにより、人種、民族、障害、社会経済的地位の違いなど、さまざまな集団の人々が同じレベルの医療を受けていないという認識が高まっています。」
とキラン氏は言います。
「ここで解決しようとしている問題は、私たちの患者にとって、最悪の場合での健康格差です。データが示すように、彼らはこれらのリハビリをあまり利用することができず、失語症のためにコミュニケーションの問題を抱えたままです。」
この研究の一環として、研究チームは一方の言語での回復が他方の言語の回復にどのように影響するかを調べています。
例えば、英語で「dog(英語の犬)」という言葉を学ぶときに、患者は「perro(スペイン語で犬)」という言葉を思い出します。
「もしあなたがバイリンガルなら、言語間を行ったり来たりするかもしれません。私たちが研究室で やろうとしているのは、それをセラピーとして使用することです。」
とキラン氏は言います。
このテクノロジーを使用した臨床試験はすでに進行中であり、それにより、このモデルが病院や臨床環境でどのように実装される可能性があるかについて、より明確な詳細が間もなく明らかになります。
「私たちは効果的な治療プログラムを開発しようとしていますが、患者全体へ対処しようとも試みています。」
とキラン氏は言います。
「これが、私たちが、健康格差と患者の全体的な健康状態を深く気にかけている理由です。」
【以下のリンクより引用】
Computer simulations of the brain can predict language recovery in stroke survivors
Medical Xpress