脳細胞の輸送障害がアルツハイマー病、パーキンソン病につながる可能性
マウスとハエにおいてのプロセスを研究した後、科学者たちは、細胞内のタンパク質を分解する分子機械を輸送できないことが、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患の原因である可能性があることを示唆しています。
損傷したり、誤った形状であったり、または需要よりも余分なタンパク質を分解する能力は、生細胞における重要な機能ですが、このプロセスは、細胞内の特定の場所で発生します。
これらの場所の一部は、軸索に沿って横たわっているため、ニューロンまたは神経細胞の細胞体から1メーター以上離れている可能性があります。
細胞は、プロテアソームと呼ばれる複雑な分子機械を使用して、特定の活性部位でタンパク質を分解します。
神経変性疾患の特徴の1つは、分解に失敗したタンパク質の蓄積です。
その例には、アルツハイマー病におけるベータアミロイド、およびパーキンソン病におけるアルファシヌクレインの蓄積があります。
分解されないタンパク質が蓄積すると、それらは互いに、そして他の物質へも粘着し、脳細胞を詰まらせ、機能を破壊します。
細胞は最終的に動作を停止し死に至ります。
輸送障害
ニューヨーク州ニューヨークにあるロックフェラー大学の科学者によって行われた新しい研究は、プロテアソームの輸送の失敗が神経変性疾患で発生するタンパク質の蓄積の原因になる可能性があるという考えを支持しています。
研究者は、最近の2つの論文においての発見について報告しています。
1つは科学誌『Developmental Cell』、もう1つは米国科学アカデミー紀要(PNAS)です。
「これは、プロテアソームが働くために神経末端に移動するメカニズムを見つける最初の研究です。」
と、両研究の上級著者であるヘルマン・ステラー教授は述べています。
「このメカニズムが破壊されると、神経細胞の機能と長期的な生存に深刻な影響があります。」
と彼は付け加えました。
最初の研究においては、彼と彼の同僚はショウジョウバエとマウスのプロテアソームについて調査しました。
そこで、彼らは、タンパク質プロテアソーム阻害剤31(PI31)がニューロンの軸索でプロテアソームを輸送するために不可欠であることを発見しました。
PI31は、プロテアソームがそれらを一緒に輸送する分子モーターに結合するのを助け、モーターの動きを促進します。
PI31がなければ、プロテアソーム輸送は停止します。
遺伝子操作がさらに光を放つ
2番目の研究では、研究者はPI31の遺伝子を操作することにより、PI31をより徹底的に調査しました。
彼らは、長い軸索を持つ2種類の脳細胞で「サイレントPI31遺伝子」を持つマウスを設計しました。
遺伝子のスイッチを切ると、それらの細胞はPI31タンパク質を産生できず、プロテアソームを輸送できませんでした。
科学者は、これがどのように長い軸索の端、または「神経細胞の遠位端」に異常なタンパク質の蓄積をもたらすかを確認しました。
また、「PI31」が欠落している神経細胞が奇妙に見えることもわかりました。
「構造的欠陥」は、軸索の分岐点および神経細胞間の接合部を形成するシナプスで特に顕著でした。
「特に、これらの構造変化は加齢とともに次第に深刻になりました。」
とステラー教授は述べています。
彼は、それらの欠陥のあるマウスを観察したとき、
「いくつかの人間の神経変性疾患で見られる重度の行動および解剖学的欠陥」を思い出したと説明しています。
新しい治療法の可能性
研究者は、彼らの発見が神経変性疾患におけるPI31の役割についての知識の増大に役立つと信じています。
たとえば、パーキンソン病にはPARK15遺伝子の変異が原因で、他のタイプよりも人生の早い時期に発症する深刻なタイプがあります。
科学者は、PARK15がPI31と相互作用するため、その破壊がプロテアソーム活性を妨げる可能性があると提案しています。
研究者は、PI31とそれが相互作用する分子を薬物標的として使用する方法をすでに模索しています。
PI31は神経細胞が形成中の初期の段階で活性化されるため、疾患プロセスの初期で介入する治療法につながることを願っています。
彼らが追求している別の手段は、停止したプロテアソーム輸送を再び動かす方法です。
新しい研究ではタンパク質の蓄積のメカニズムに焦点を当てていますが、ステラー教授はそれが根本的な原因ではあるものの、より大きな何かを起こす症状であるとは考えていません。
「私たちの研究は、それが本当にプロテアソームの局所的な欠陥から始まり、その結果として、神経機能に重要なタンパク質を分解できないとことを示しています。」
【以下のリンクより引用】
Transport breakdown in brain cells may lead to Alzheimer's, Parkinson's
Medical News Today