腸と脳:母親の腸内の微生物が胎児の神経発達にどのように影響するか
マウスでの実験ではマウスの妊娠中、母親の腸に生息する何十億もの細菌やその他の微生物が主要な代謝物、健康な胎児の脳の発達に重要な小分子を調節していると、UCLAの生物学者は9月23日にNature誌に報告しています。
妊婦である母親の腸内微生物叢は脳機能と多くの場合、感染、高脂肪食、妊娠中のストレスなどの要因に応じて、子孫の行動の異常に関連付けられていますが、科学者たちは、それが出生前の重要な時期、そしてそのような環境の課題がない場合に脳の発達に影響を与えるかどうか、これまでわかっていませんでした。
腸内微生物が代謝物や母体の血中を循環する他の生化学物質に与える影響をテストするために、研究者らは腸内細菌を殺すために抗生物質での処理がされたマウスと、同様に、実験室において無菌状態で飼育されたマウスを発現しました。
「両方の方法を使用して母体の腸内細菌叢を枯渇させると、同様に胎児の脳の発達が妨げられました。」
と、UCLAのエレイン・シャオ(Elaine Hsiao)研究室の博士研究員であり、研究の筆頭著者であるヘレン・ヴォン氏は述べました。
母体の腸内細菌叢を枯渇させると、ニューロン内の新しい軸索の形成を含め、多くの遺伝子を含む胎児の脳の発達において、どの遺伝子がオンになるのかに変化が現れたと、ヴォン氏は述べました。
*軸索というのは、脳細胞をつなげそれらが通信できるようにする小さな繊維です。
特に、脳の視床とその皮質をつなぐ軸索は数と長さが減少していることを研究者達は発見しました。
「これらの軸索は、環境を感知する能力にとって特に重要です。」
とヴォン氏は述べました。
「これと一致して、腸内細菌叢を欠いている母親から生まれた子供には、特定の感覚行動に障害がありました。」
調査結果は、母体の腸内細菌叢が胎児の脳自体に入る代謝産物を調節することにより、健康な胎児の脳の発達を促進できることを示している、とヴォン氏は述べました。
「母親の血液、胎児の血液、胎児の脳の分子の種類とレベルを測定したところ、妊娠中に母親の腸内細菌叢が無くなると特定の代謝産物が一般に減少または欠落することがわかりました。」と彼女は述べました。
その後、生物学者らはこれらの主要な代謝産物の存在下で、ニューロンを成長させました。
彼らはまた、これらの代謝産物を腸内微生物が枯渇した妊娠中のマウスに導入しました。
「これらの代謝産物の存在下でニューロンを成長させたとき、それらはより長い軸索とより多くの軸索を発達させました。」
とヴォン氏は述べました。
「そして、微生物が枯渇したときに減少または欠落している主要な代謝産物を妊娠中のマウスに補充すると、それらの代謝産物のレベルが胎児の脳で回復し、軸索の発達と子孫の行動の障害が防止されました。」
「腸内細菌叢は、妊娠中の母親だけでなく、発育中の胎児や胎児の脳でも多くの生化学物質を調節する驚くべき能力を持っています。」
とヴォン氏は述べました。
「私たちの調査結果はまた、軸索の成長を促進する特定の代謝産物を特定しています。」
この結果は、微生物相と神経系の間の相互作用が、少なくともマウスにおいて、胎児の脳に対する母体の腸微生物相の影響を介して、出生前に始まっていることを示唆しています。
この調査結果を人間への適用する可能性はまだ不明であると、UCLAの統合生物学および生理学、ならびにUCLAカレッジの微生物学、免疫学および分子遺伝学の准教授であるエレイン・シャオ氏は述べました。
「この発見が人間にどのように当てはまるかはわかりません。」
と、シャオ氏は述べました。
「しかし、妊娠中に経験する遺伝的および環境的危険因子の両方によって引き起こされると考えられている多くの神経発達障害があります。私たちの研究では、妊娠中の母体の腸内細菌叢も検討し、母親の健康だけでなく発育中の子孫の健康にも影響を与える可能性のある要因としてさらに検討する必要があることを示しています。」
シャオ氏、ヴォン氏らは、2019年にセロトニンと抗うつ剤などのセロトニンを標的とする薬剤が腸の微生物叢に大きな影響を与える可能性があると報告しました。
2018年には、シャオ氏と彼女のチームは、発作感受性と腸内微生物叢の因果関係を確立し、ケトン食療法の抗発作効果に重要な役割を果たす特定の腸内細菌を特定しています。
【以下のリンクより引用】
Guts and brains: How microbes in a mother's intestines affect fetal neurodevelopment
Medical Xpress