腸内細菌が一般的な糖尿病薬の寿命延長効果を高める可能性
国際的な科学者チームによる新しい研究により、一般的に処方されている2型糖尿病薬の効果は、特定の腸内細菌によって産生される代謝産物によって規制されていることが明らかになりました。
この研究は、マイクロバイオームがどのように薬物の有効性に影響を与えることができるかについて、より具体的には、その潜在的な『寿命延長効果』が注目されている薬物の活性にどのように影響するかについての説得力のある洞察を提供しています。
メトホルミンは新薬ではありません。
世界保健機関によって「必須医薬品」に分類されたこの薬は、数十年にわたって2型糖尿病患者の血糖値を下げるために使用されてきました。
しかし、過去数年にわたる研究で、科学者たちは、メトホルミンを服用している患者が糖尿病でない人よりも癌の発生率が低く、寿命が長いようだと 気づき始めました。
2017年に公開された興味深いメタアナリシスでは多くの研究を収集し、メトホルミンは糖尿病への影響とは無関係に健康と寿命の延長に関連していると結論付けました。
一部の動物研究では、薬が寿命を大幅に延長することも示されていますが、これらの効果は一貫していません。
この新しい研究では、腸内細菌によって産生される代謝物が薬の有効性を調節できるかどうかを調査しています。
薬剤、栄養素、微生物、および宿主の間での相互関係を調査する方法として、新しいハイスループットスクリーニングが開発された後、研究者は2つの生物モデルで詳細なメカニズムの調査を実施しました。
この研究は、ショウジョウバエとワームの両方で、メトホルミンの寿命延長効果が特定の細菌の存在によって調節されるように見えることを明らかに しました。
更に具体的には、アグマチンと呼ばれる代謝産物の細菌産生が、主にメトホルミンの有益な効果を媒介するように見えることが発見されました。
研究者は、これらの結果が最終的に人間にどのように類似しているかを調査しなければ、研究が大した意味を持たないことを理解しました。
「ワームでの結果に興味をそそられ、はるかに複雑な人間の微生物叢にも適用されるのではないかと考えました。」
と、この研究の主著者であるクリストフ・カレタ氏は説明します。
「収集したサンプルから、各参加者の腸内でどの細菌が見つかるかを判断し、それを腸内細菌叢のコンピューターシミュレーションに変換しました。
このモデリング手法から、メトホルミンを服用し、腸内微生物叢に大腸菌が存在する患者は、宿主全体の健康改善に役立つ窒素含有化合物をより多く生成できることがわかりました。」
新しい研究は、腸内細菌が特定の薬物の有効性に影響を与える方法を調査する急速に成長している研究分野に追加されます。
今年初めにイェール大学で行われた印象的な研究では、さまざまな細菌が一般的な薬物とどのように相互作用するかをカタログ化するという複雑な作業が始められました。
ハーバード大学とカリフォルニア大学サンフランシスコ校からの最近の研究では、特定の腸内細菌がパーキンソン病の治療薬であるレボドパの活性をどのように抑制するかを具体的にプロファイルしました。
新しい研究から得られた重要な点の1つは、研究チームによって開発された新しい4ウェイスクリーニング手法です。メトホルミンとその可能な老化防止効果に関して、研究者らは細菌の代謝物がどのように薬物の活性を高めることができるかは明らかであるものの特定の寿命延長効果を生成 するために何が起こっているのかはまだ正確には不明であると記しています。
「私たちの新しいスクリーニング技術は、宿主代謝を調節するメトホルミン特有の代謝および細菌のシグナル伝達経路を明らかにするのに役立ち ました。」
と、新しい研究の著者であるフィリペ・カブレイロ氏は言います。
「しかし、メトホルミンがこの一連の事象を引き起こすことを阻害する生物学的標的であるかどうかはわかっていませんので、それが次に調査すべき ことなのです」。
【以下のウェブサイトより引用】
Gut bacteria may enhance lifespan-extending effect of common diabetes drug
NEW ATLAS