膵臓への真菌の侵入が癌のリスク要因に
特定の真菌は腸から膵臓に移動し、その数を1000倍以上に増やし、膵臓癌の成長を促進することを新しい研究が発見しています。
科学誌Nature 10月2日のオンライン版で公開されたこの研究は、マイコバイオーム（膵臓内での真菌種の局所的な混合物）が正常な細胞を膵管腺癌または動脈管開存症（PDA：Patent Ductus Arteriosus）に変えるという変化を引き起こす可能性があるという強力な証拠を示した最初の研究です。
この形態の癌では余命は通常2年以内です。
マウスおよび膵臓がん患者で実施されたこの研究では、真菌種が膵管内の膵臓に移動し、消化管が腸を介して反対方向に流れ込むことがわかり ました。
研究の著者は、この交換がPDAの存在下では、腸と膵臓の両方で異常な真菌集団を形成すると言います。
ニューヨーク大学（NYU） 医学部と歯学部の研究者によって導かれたこの研究では、強力な抗真菌薬でマウスを治療すると、PDAの腫瘍の重量が 30週間で20％〜40％減少することもわかりました。
「私たちのグループの過去の研究では、細菌が腸から膵臓に移動することが示されましたが、この新しい研究では、真菌もその移動を行い関連する 真菌集団の変化が腫瘍の発生と成長を促進することが初めて確認されました。」
と、 NYU ランゴーンヘルスペルルムターがんセンターの腫瘍免疫学研究プログラムの共同リーダーであるジョージ・ミラー博士は述べました。
著者によると、ウイルス、細菌、寄生虫はアメリカ癌協会によって病気の原因因子として認識されていますが、過去に真菌を膵臓癌に関連付けた研究はありませんでした。
研究の詳細
正常細胞が癌化したとき（発癌）に、マイコバイオームが再プログラミングされるかどうかを判断するために、研究チームは膵臓癌の有無にかかわらず、30週間にわたりマウスの糞便サンプルの分析を行いました。
研究者は、ゲノムおよび統計的手法を使用して、存在する真菌種を特定およびカウントしました。
彼らはまた、光るタンパク質を真菌に付着させて、腸および膵臓での通過移動経路を追跡しました。
研究期間の終了までに、研究者らは、健康な臓器と比較した場合、癌性膵臓の真菌集団のサイズと組成に有意な差があることを観察しました。
マウスおよびヒト組織の両方で最大の個体数増加は、14種のマラセジア属で見られました。
チームはまた、パラスタゴノスポラ属、サッカロミセス属、セプトリエラ属で異常に高い数を検出しました。
「マラセチア菌は、一般に皮膚と頭皮に見られますが、フケとある種の湿疹が原因であることは、長い間わかっていました。そしてこの研究はそれらを皮膚癌と結腸直腸癌にも結び付けました。」
とNYU歯学部において基礎科学と頭蓋顔面生物学の教授である、上級共同著者のディーパック・サクセナ博士は言います。
「私たちの新しい発見は、マラセチア菌が膵臓腫瘍にも豊富に存在するという証拠を追加します。」
真菌の数の変化が癌の成長に及ぼす影響を確認するために、チームはマウスを強力な広域スペクトルの抗真菌薬であるアムホテリシンBで 治療しました。
抗真菌治療は、腫瘍重量の減少に加えて、膵臓癌への初期の細胞段階である乳管異形成の発生を20〜30％減少させました。
「真菌を取り除くことは、標準的な化学療法薬であるゲムシタビンの抗がん効果を15％〜25％強化しました。」
と、共同研究者であり、ミラー研究室のポスドク研究員であるバーク・アイクット博士は述べています。
研究チームはマウスの膵臓のほとんどが薬物治療により真菌が除去された後、特定の種のみが臓器の再増殖を許可された場合においての癌の 成長に対する影響を調べました。
彼らは、マラセチア菌が再発生したマウスの膵臓で癌が20％速く成長することを発見しましたが、他の頻繁に発生する真菌種の存在下ではそうではありませんでした。
この研究結果は、真菌が免疫系で最初に反応した部分である補体カスケードを活性化することにより癌のリスクを高めることが議論されています。
そのようなメカニズムは感染とは戦うものの、感染が減少するにつれて治癒プロセス（細胞の成長）を引き起こします。過去の研究では、遺伝的欠陥と組み合わされた場合、攻撃的な組織成長（がん）を促進することが示されています。
「我々のチームの今後の目標の1つは、がんに最も関連性のある種を特定することです。
そうすることで、抗真菌薬で標的となる腫瘍の成長を遅らせ、副作用を回避するという将来の試みを導くことができます。」
とNYU歯科大学の研究科学者であり、共同第一著者のスムルティ・プシュカルカー博士は述べています。
【以下のウェブサイトより引用】
Fungal invasion of pancreas creates cancer risk
Medical Xpress