薬物によりADHDの一部の成人の思考機能障害が抑えられる可能性
2021年6月30日(ヘルスディ・ニュース) - ADHDの患者は、朦朧として動きが遅く、無気力といった顔に現れない症状である、多動性障害を伴うことがあります。
これは、これらの症状は、Sluggish Cognitive Tempo(SCT) と呼ばれるADHDと併発することが多い別の精神障害のように見えるものに起因するためです。
現在、新しい臨床試験では、ADHDの治療に長い間使用されてきた覚醒剤がSCTを患っている可能性のある人々を助ける可能性があることが示されています。
リスデキサンフェタミン (商品名ビバンス, Vyvanse)は、ADHDの成人38人での小グループで認知テンポの鈍化といった症状を30%減少させたと研究者らは6月29日に精神保健についての代表的なピア・レビュー誌である『Journal of Clinical Psychiatry』のオンライン版で報告しました。
この薬剤はまた、ADHDの症状を40%以上低下させました。
ニューヨーク州グレンオークスにあるザッカーヒルサイド病院(Zucker Hillside Hospital)の精神科医であるスコット・クラコワー博士は、この試験結果は決定的なものではないものの、『認知テンポの鈍化』 を治療するためにビバンスを使用することは有望だと述べました。
「臨床的に、私たちはこの症状を治療するために何年もこれを使用してきました。」
とクラコワー博士は述べました。
「正直、私が診察したADHD患者では、この SCT がより大きな患者の不満の1つなのです。」
と博士は付け加えました。
ADHDの人の約半数は、認知テンポの鈍化に関連する症状もあると研究者らは背景について記しています。
しかし、SCTは、ADHDではない人々に影響を与える可能性のある別の障害であるようだとメリーランド州の成人注意欠陥障害センターの所長であるデビッド・グッドマン博士は述べました。
「彼らはしばしば空想にふけりそれが頭の中をぐるぐる回ります。そして情報処理が遅いのです。しばしば思考テンポの鈍化で混乱しているようにも思えます。彼らはエネルギーレベルが低い(気力がない)ようにも思えます。」
とグッドマン博士は述べました。
「時間が経つにつれて、この一連の症状はADHDで見られるようにはなりますが、ADHDに固有のものではありません。」
SCTは比較的新しい神経発達症であり、まだそれ独自で診断可能な状態にはなっていない、とグッドマン博士は付け加えました。
この臨床試験では、ADHDとSCTを持つ36人以上の人々がビバンス、またはプラセボのいずれかで4週間治療されました。製薬会社のシャイアーそして、武田薬品が研究費を支援しています。
ビバンス(Vyvanse)は、2007年から米国食品医薬品局によってADHDの治療薬として承認されており、現在、子供や、10代の若者、および成人でのこの障害の治療薬として承認されています。
これはアデラール(Adderall)に似たアンフェタミンですが、ADHDの症状を治療するために体内で異なる働きをするとグッドマン博士は述べました。
「ビバンスは、ADHDの分野では、患者の生涯にわたる有効性が非常に確立されています。」
とグッドマン博士は述べています。
ニューヨーク市にあるニューヨーク大学グロスマン医科大学とマウントサイナイ医科大学の研究者による研究によると、この薬はプラセボを投与された患者と比較して、患者のADHDとSCTの両方の症状を改善しました。
ニューヨーク大学 Langone Healthで成人のADHDプログラムを指揮するレナード・アドラー博士が、この研究の主任研究者でした。
さらに、彼のチームは、やる気のなさ、警戒心の問題、混乱の兆候など、全体的な改善の約4分の1だけが、認知テンポの鈍化での改善であり、その他はADHD症状の改善によるものであることを示しました。
これは、認知テンポの鈍化が実際にはそれ自体の別個の障害であり、ADHDと一部重複しているだけであることを示していると研究者らは結論付けました。
それは本当に研究の主要なポイントの1つであるとグッドマン博士述べ、SCTがADHDとは別にそれ自体の障害であるという証拠に積み上げられたと付け加えました。
「認知テンポの鈍化は、ADHDの症状として存在しますが、診断基準によるADHDがなくても発生する可能性のある一連の症状なのです。」
とグッドマン博士は述べています。
しかし、臨床試験は完璧なものではありませんでした。
クラコワー博士氏は、このように広く使用されている薬剤については非常に小規模な研究であったため、患者に見られた改善は統計的に有意なレベルまでには達しなかったと述べました。
「それが最高のデータだったとは言えません。」
と彼は述べました。
「これに関するより多くのデータを確認したいと思います。これは、ほどほどの結果が得られた小規模な研究なのです。」
クラコワー博士は、SCTに重点を置いた、より多くの患者を対象としたより大規模な追跡試験を行いたいと思ってます。
さしあたり、グッドマン博士は、
「この試験は精神科医がADHDの個人を診察する際に、“認知テンポが遅い”ということを考慮する必要があると考慮に入れるための情報となるでしょう。」
と述べています。
【以下のリンクより引用】
Drug May Curb 'Sluggish' Thinking in Some Adults With ADHD
Healthday