血圧、コレステロール低下薬は生存率を引き続き改善
ESC Congress 2018で発表され、The
Lancetに掲載されたASCOTレガシー研究の最新の報告によると、血圧とコレステロール低下薬は高血圧患者の生存期間を10年以上延長し続けています。
ロンドン大学クイーン・メアリーカレッジのアジャイ・K・グプタ氏は次のように述べています。
「60歳代の高血圧患者で、カルシウムチャンネル遮断薬系の血圧降下薬とスタチンの併用治療を受けている人は、75歳から80歳までに心臓病や脳卒中で死亡する可能性は低いようです。」
ASCOTレガシー研究は、英国の8,580人の患者の長期フォローアップを行ったもので、それは、1998年から2000年の間に、高血圧および心血管疾患の3つ以上のさらなる危険因子を有する患者についての治験でした。
カルシウムチャンネル遮断薬をベースとした血圧低下治療を5年間受けた患者では、ベータ遮断薬ベースのより古い治療法よりも10年後に脳卒中で死亡する可能性が29％低くなりました。
より新しい治療法では、心臓血管を原因とする死亡が10％少なくなるという傾向はありませんでした。
試験開始時の平均血中コレステロール値（6.5mmol
/ l）以下の患者では、スタチンを3～5年間投与した患者で、心臓病や脳卒中などの心血管系の原因で16年後に死亡する可能性はプラセボに無作為化された患者よりも15％低くなっています。
5年間の標準的なコレステロール低下療法を受けた平均コレステロールを上回る患者のサブグループは、より新しい血圧療法での10年間のフォローアップにおいて、以前の古い研究と比較して心臓血管による死亡率は21％下がりました。
より新しい治療では、脳卒中の発生と死亡率が低下する傾向は軽微でした。
「これらの結果は注目に値します。」と、グプタ氏とともに共同研究を主導した英国国立心肺研究施設のピーター・セヴァー教授が述べました。
「スタチンは、治験が終了された後にも長期的な生存といった利益をもたらすことを以前に示していましたが、血圧治療では初めて見出されました。」
グプタ氏はまた、次のように述べています。
「この調査結果は、高血圧の大半の患者において効果的な血圧降下療法とスタチンの併用をさらにサポートするものです。」
最初のASCOT試験の主な目的は、高血圧に対する新たな治療戦略が、以前の治療戦略よりも心臓発作を予防するのに有効であるかどうかを見出すことでした。
高血圧患者は、ランダムに治験が割り当てられ、アムロジピン（カルシウムチャンネルブロッカー）、目標血圧を達成するために必要であれば、ペリンドプリル（アンギオテンシン変換酵素阻害剤）をプラスする新たな治療法、または従来の治療法であるアテノロール（ベータブロッカー）に必要に応じて、ベンドロフルメチアジド（利尿薬）とカリウムが割り当てられました。
新しい治療法でより多くの脳卒中や死亡が防止されたため、治験薬は5年間の中央値で採取されました。
治験の後、患者は通常の（または日常的な）治療を受けるために投薬を継続しました。
この治験の第2の目的は、スタチンが、高血圧および6.5ミリモル/ L未満のコレステロールレベルを有する患者の冠動脈心疾患に対する追加保護的な効果が見られるかどうかを確認することでした。
6.5mmol/L以下の血中コレステロール値を有する患者をアトルバスタチンまたはプラセボに無作為に割当て、3年間経過を観察したところ、アトルバスタチンがより多く、心臓発作および脳卒中を予防したため、早期に治験は終了されました。
これに続いて、アトルバスタチンにて血圧降下の治験が行なわれました。その2年の間には、それ以前の3.3年間にアトルバスタチンまたはプラセボに割り当てられた患者の約3分の2がアトルバスタチンを服用しました。
この治験の第3の目的は、高血圧および高コレステロール（6.5mmol/Ll 以上）の患者におけるより新しい高血圧治療の効果を評価することでした。
これらの患者は、脂質低下療法の無作為化治験には参加せず、5年間に渡り、標準的な脂質低下療法を受けていました。
ウィリアムハーベイ研究所のマーク・カールフィールド局長は、「この研究は、心血管疾患を撲滅し人々の寿命を延ばすために、血圧およびコレステロールを低下させることの重要性を確認しています。」と述べています。
出典：欧州心臓学会