血圧薬はあなたの記憶力を守るのか?
2021年6月21日月曜日(ヘルスディニュース)- 特定の血圧薬を使用する高齢者は、加齢とともに記憶力をよりよく保持している可能性があると新しい研究が示しています。
研究者たちは、有毒物質が脳に侵入するのを防ぐ特殊な細胞の境界である「血液脳関門」を通過する薬を服用している高齢者の間でこの利点が発見されました。
これらの薬には、特定のACE阻害薬とアンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)が含まれます。これら2つは主要な血圧薬です。
約12,900人の研究に参加した患者の中で、脳浸透薬を服用している患者は、血液脳関門を通過できない血圧薬を服用している人々と比較して、3年間の調査で記憶の喪失が少ないことがわかりました。この調査結果は、血圧と脳の健康の関係に別の要素を追加するものです。
高血圧は認知症の危険因子と考えられていますが、厳格な血圧管理を行うことで、加齢に伴う認知障害(記憶力と思考力の低下)を発症するリスクを低下させるという証拠があります。
この新しい研究は、6月21日にHypertension誌に掲載されました。
上級研究者のダニエル・ネーション氏は、脳に浸透する薬が血圧を下げること以上の「追加の利益」をもたらす可能性があることを示唆しています。
「この効果は血圧管理とは無関係だと思います。」
と、カリフォルニア大学アーバイン校の記憶障害および神経障害研究所(the Institute for Memory Impairments and Neurological Disorders )の准教授であるネーション氏は述べました。
ACE阻害薬とARBはどちらも、血圧調節の鍵となる体内のレニン-アンジオテンシン系で作用します。
しかし、ネーション氏は、脳には体とは別の独自のレニン-アンジオテンシン系があると説明しました。
研究によると、このシステムは学習と記憶に関与しており、アルツハイマー病では「変化」していることが示唆されています。
血圧の低下が脳に利益をもたらすということを軽視している人はいないとネーション氏は強調しました。
『SPRINT-MIND』と呼ばれる2018年の試験では、高血圧の「集中的な」管理により、標準的な血圧管理と比較して、高齢者の軽度認知障害のリスクが19%低下することがわかりました。
これは、収縮期血圧(上の血圧)が120 mmHg未満になることを意味します。
「積極的な血圧の管理を超えて私たちができることは他にあるのかどうかを求めています。」
と、ネーション氏は述べました。
彼のチームは、以前に発表された14件の高齢者を対象としたデータを収集しました。そのほとんどは60代または70代の高齢者での研究データです。
全員が高血圧のためにACE阻害薬またはARBを服用していました。
ACE阻害薬のカプトプリル、フォシノプリル、リシノプリル、ペリンドプリル、ラミプリル、トランドラプリル、またはARBのテルミサルタンとカンデサルタンなど、血液脳関門を通過する薬を使用している人もいました。
全体として、ネーション氏の研究チームは、これらの薬を服用している患者は、非交差血圧薬を服用している患者と比較して、3年間で記憶力の低下が遅いということを発見しました。
バージニア大学の医学教授であるロバート・キャリー博士は、この調査結果は、特定の血圧薬が記憶力の低下を遅らせるのに優れているかどうかという「非常に重要な問題」を提起していると述べました。
この研究で最終的な回答が得れれるとは言わないまでも、研究は継続されるべきであると彼は述べました。
「これは私たちが注意を払う必要があることです。」
と、高血圧の治療に関する米国心臓病学会/米国心臓協会のガイドラインの作成を行ったひとりである、キャリー博士は述べました。
大きな問題の1つは、脳に浸透する薬を服用している人が最終的に認知症のリスクが低いかどうかです。
「それはまだ証明されていません。」
とネーション氏は述べました。
そして、研究に参加したこれらの薬を服用している患者は、記憶力テストではやや良好であったものの、実際に、別の認知スキルである注意力では悪化が見られました。
ネーション氏はそれは驚きの発見であったと述べました。
しかし、彼は、記憶能力とは対照的に、注意力はストレスや気分などによって左右される可能性があると述べました。
現時点では、キャリー博士は、さまざまな投薬、食事の変更、運動、禁煙など、「何らかの手段」を使って高血圧を管理することの重要性を強調しました。
「血圧管理が認知において重要であることは明らかであるように思われます。」
とキャリー博士は言います。
医師が高血圧治療薬を処方するとき、彼らはその薬が脳に浸透するかどうかは考慮しておらず、または、おそらく知らないであろうと彼は述べました。
しかし、ネーション氏は、ACE阻害薬またはARBが何らかの形で処方されている場合、それを考慮に入れることができると述べました。
患者がすでに脳に交差しないタイプのACE阻害薬またはARBを服用している場合は、興味があれば、医師と薬の切り替えについて相談することができると彼は述べました。
【以下のリンクより引用】
Can Your Blood Pressure Medicine Protect Your Memory?
Healthday