血球の突然変異と年齢とともに増加する感染リスクとの関係が研究で明らかに

新しい研究では、加齢に伴う血球染色体の変化が免疫力低下のマーカーであることが示唆されています。

重度の感染症にかかるリスクは、加齢とともに劇的に高まりますが、科学者は加齢が免疫力の低下にどのように関係するかをまだ理解していません。

この研究によると、血液細胞の特定の加齢に伴う変化は、重度の COVID-19、他の肺炎、敗血症など、さまざまな重度の感染症のリスクが高くなることが示されています。

研究者たちは、世界中の約 800,000 人の患者から得た遺伝データと臨床データを分析しました。

彼らは、モザイク染色体変化 (mCA) と呼ばれる特定のタイプの後天的に再編成された血液細胞の染色体に持つ人は、mCA を持たない人に比べて敗血症を発症する可能性が 3 倍近く、肺炎になる可能性は2 倍高いことを発見しました。

これらの遺伝的変化は年齢とともに血液細胞に蓄積し、多くの場合、高齢者に一般的に見られるクローン性造血と呼ばれる状態となって現れます。

Nature Medicine 誌に掲載されたこの研究では、2020 年にニューヨークで最初に流行した COVID-19 の患者にも注目し、mCA が COVID-19 の重症度とも相関していることを発見しました。

この研究は、マサチューセッツ工科大学（MIT）、ハーバード大学、マサチューセッツ総合病院、イェール大学、国立がん研究所の科学者のチームが主導しました。

彼らは、米国、英国、フィンランド、日本の 5 つのバイオバンクの患者からのデータを研究しました。

「サンプルの数、様々なコホート数、一緒に行動するために必要な異なるチームの数を考えるとこれは野心的な研究でした。」

と、この研究の共同主任研究者であるマサチューセッツ総合病院の心臓専門医、プラディープ・ナタラジャン氏は述べました。

「これは、まったく新しい病気に関する新しい洞察を得るために、誰もが個人的に投資している多くの COVID-19 研究の象徴だと思います。これは、私がこの規模の他の共同研究で経験した他の研究よりもはるかに速い規模で動くことができました。」

人の一生を通じて、血液細胞は遺伝子変異を行い、その一部は血液または造血幹細胞の急速な成長をもたらします。

これがクローン造血 (CH) と呼ばれるプロセスです。

CH の兆候であるモザイク染色体の変化は、異常な白血球数と、血液、骨髄、およびリンパ節の癌のリスク増加に関連しています。

しかし、これまで、mCA と免疫機能との関係は知られていませんでした。

新しい研究で、研究チームは、mCA を有しているものの、明らかな血液癌が見られない人には、呼吸器系、消化器系、および泌尿生殖器系の感染症を含む、さまざまな感染症のリスクが高いことが分かりました。

患者が以前に固形癌と診断されていた場合、敗血症や肺炎 (入院が必要になることが多い重度の感染症) のリスク要因はさらに高くなりました。

この発見は、mCA が癌と感染症の両方の、重要な共通の危険因子であり、免疫監視において調節不全のマーカーになる可能性があることを示唆しています。

調査に参加した COVID-19 患者のうち、軽度の症例の 6% と重症の症例の 17% の患者にmCAがありました。

著者らは、mCA をスクリーニングすることは、予防対策の効果があると思われる感染リスクの高い個人を特定するのに役立つ可能性があると述べています。

COVID-19 患者の場合では、血液検査によりmCA の存在が示された場合は、医師が「ポリクローナル抗体」などの予防的治療をいつ行うかを判断するのに役立つ可能性があります。

ナタラジャン氏の研究チームはまた、企業と協力して、直接、通常は直接消費者向けに遺伝子関連企業により使用される唾液検査が、血液中の mCA と相関する唾液 DNA の同様の突然変異を検出するために使用できるかどうかを評価しています。

ナタラジャン氏は、彼らの調査結果は COVID-19 が収束した後の世界にも関連していると述べています。

「どんな人が重症感染症のリスクにさらされるのかを理解し続けることが重要だと思います。そして、今日、そのリスクを評価する方法は主に年齢によるものです。」

とナタラジャン氏は述べました。

「この研究は、それに更に磨きをかけ、そして今後、新規のパンデミックが起きた際にワクチンへのアクセスの優先順位を考慮するといった将来の公衆衛生の取り組みに役立つかもしれません。」

【以下のリンクより引用】

Medical Xpress