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認知症とアルツハイマー病試験で患者の生活を向上する希望が示される

カレン・クックは孫のペインに読み聞かせを行うのが大好きです。

しかし、彼女の記憶力が低下してきていることで、簡単にいかないこともあります。

「おばあちゃん」と、ペインは祖母を見上げて呼びかけます。

「それはもう聞いたよ」

家族が気づき始めたのは、こんな些細な出来事がきっかけでした。

54歳のクックさんは、
2年前に若年性認知症であると診断されました。
彼女はこの病気を、「ディスコヘイズ」が頭の中を通り抜けるようだと表現しています。

「最初は本当に大変でした。」と彼女は言います。

「何が起こっているか分からないという感覚が嫌だったのです。」

彼女は現在娘のレクシーとペインと共にオーストラリアのベンディゴで暮らしており、彼らは一丸となって彼女の記憶障害への対処する実用的な方法を考案しました。

クックさんにとって、日常生活を送ることが最も複雑なことだったのです。

しかし、研究者によると、この疾患と闘う最前線には希望があるといいます。


<認知症の津波>
メルボルンに拠点を置く医療専門サービス会社オースティン・ヘルスのマイケル・ウッドワード准教授にとって、

ウッドワード氏は、認知症診断を受けるオーストラリア人の数は激増すると考えています。

「人々は、津波や地球温暖化、テロの恐怖について話します。」と、ウッドワード氏は言います。

「私は実際の所、認知症やアルツハイマー病こそが津波であり、これは残念なことに私たちに重くのしかかりかけていると考えます。」

「いち早く対策を考案するための努力が必要です。」

クックさんにとって、これはガンテネルマブと呼ばれる新薬の試験という形で到来しました。

これは、体内の物質に結合する、モノクローナル抗体(実験室で作られたタンパク質)です。

医師は、この薬が待ち望まれていた魔法の薬になるだろうと楽観視しています。

世界中で、数千人もの被験者がこの試験に参加しています。
クックさんも、メルボルンにあるオースティン病院で治療を受ける21人の患者の一人です。

この薬は、認知症の人の脳内で見られるアミロイドと呼ばれる毒性のあるタンパク質と結合し、取り除くように設計されています。

この薬の以前の試験結果は残念なものでしたが、研究者は高用量を用いれば、早期アルツハイマー病患者の認知機能低下スピードを遅らせることができる可能性があると述べています。

「この薬に臨床効果があることを確かめたいのです。」と、ウッドワード氏は言います。
「記憶力や日々の機能を改善できるかを」

「そしてこれにより、病気の進行をも遅らせることができるようになるかもしれません。」


<“長い別れ”>
リンダ・ジャックソンに取って、母親が認知症に苦しむ様子を見るのは心が痛むものでした。

「認知症のことを“長い別れ”と呼ぶ人もいますが、まさにそのような感じでした。」と彼女は言います。

「1回か2回、母親の家を訪れると、こんな様子で窓の外を眺めながらソファーに座っていたのを覚えています。」

「彼女は、自分に起こっていることを理解できていませんでした。」

「彼女は生涯を終えるまで私たち全てのことを認識することはできましたが、他のことはほぼ全て忘れてしまいました。」

パースの郊外であるマウントプレザントに住む69歳である彼女に病気の兆候は全くありませんでしたが、家族の既往歴があるため不安に思っていました。

そして、ジャックソンさんは認知症の発症をどうにかして食い止めたいと考えました。

「認知症は、誰にも発症してほしくありません。」と彼女は言います。

彼女は丁度、体がストレスホルモンであるコルチゾールを生産するのを阻害することでアルツハイマー病の発症予防を目指す薬、Xanamemの試験を終えたところです。

「この薬が本当に効果的で役に立つことが示され、10年後私が必要になった時に利用できれば良いと考えています。」

現在医療専門家は、コルチゾールレベルが長期的に上昇すると、記憶機能に影響する可能性があることを認識しています。

「コルチゾールレベルが高いことはストレスや体全体に悪影響を与えるその他のプロセスと関連していますが、特に脳に対する悪影響があり、認知症発症リスクを高める可能性があります。」と、ウッドワード氏は言います。

Xanamemに携わる製薬会社Actinogenのビル・ケテルベイ氏は、早期の研究では有望な結果が出ていると述べています。
「私たちが行った最も最近の研究では、1日20mgを健康な高齢者に投与することで、認知機能を急激に改善し、その効果は持続しました。」と彼は話します。

専門家は初期の調査結果に対して楽観的な姿勢ですが、この薬を広く処方する前に、アルツハイマー病患者に効果的であるという証拠が必要だと述べています。

次の試験は、アルツハイマー病の初期兆候がある人を対象に実施されます。

この薬を12週間服用したジャックソンさんは、希望を抱いています。

「人々の可能性を改善し、何かしらの治療法を見出すことが、極めて重要なのです。」と彼女は言います。


<最大限の努力>
ベンディゴに話を戻します。
カレン・クックさんは奇跡が起こるのを待っているだけではありません。

彼女は活動的で、頭のさえを保つように説得されましたが、証拠に基づくとこれは正しい行動です。

そのため、彼女は卓球に参加し、毎日20キロ歩き、ジムに通っています。

「運動なしで感覚を保てたらラッキーです。本当に苦戦しています。」と彼女は話します。

「しかし、脳に送る酸素量が増えれば増えるほど、ほぼ“正常”であるかのように感じます。」

「介護老人ホームには絶対すすんでいきたいとは思いません。まっぴらです。」

「それは私にとって次のステップです。今は出来る限りここにいて、最大限の努力をすることが現在の課題です。」

出典: 2019年11月25更新 ABC News『Dementia and Alzheimer's disease trials giving patients hope of a better life』(2019年11月29日に利用)
https://www.abc.net.au/news/2019-11-25/alzheimers-dementia-drugs-and-trials-giving-patients-hope/116...