過度の運動トレーニングで脳は疲れてしまう
過度のトレーニングを行うと体は疲れますが、脳も疲れてしまうのでしょうか?
9月26日に学術誌カレントバイオロジー(Current Biology)で報告された新しい研究では、その答えが「イエス」であることが示されています。
研究者が研究に参加したアスリートに過度のトレーニング負荷をかけた時、彼らは精神的な疲労の形を示しました。
この精神的な疲労には、意思決定に重要な脳の一部の活動の減少が含まれていました。
アスリートは、より衝動的に行動し、達成に時間がかかる大きなものの代わりに即時に報酬が得られるものを選択しました。
「スポーツトレーニングの過負荷の影響を受けた前頭前野は、過度の認知作業に対して脆弱であることが示されていた以前の研究とまったく 同じでした。」
と、著者でありフランス・パリにあるオピタル・デ・ラ・ピティエ・サルペトリエールのマティアス・ペシグリオーネ氏は言います。
「そのため、この脳領域は認知制御に関与する脳ネットワークの弱点として現れました。」
これらの研究はともに、精神的努力と身体的努力との関係を示唆しています。
両方とも認知制御を必要とします。
そのような制御が運動トレーニングを要求するのに不可欠である理由は、身体的な努力を維持し、遠くの目標に到達するには認知制御が必要であることを研究者らは示してます。
「筋肉や関節が痛いときに止まる自動プロセスを制御する必要があります。」
とペシグリオーネ氏は言います。
ペシグリオーネ氏や研究の第一著者であるバスティアン・ブレイン氏を含む研究者たちは、この研究の最初のアイディアは、オリンピックの競技者を 訓練するフランスの国立スポーツ体育研究所(the National Institute of Sport, Expertise, and Performance, INSEP) からだったと言います。
「オーバートレーニング症候群」は圧倒的な疲労感を経験してパフォーマンスが低下します。
問題は、このオーバートレーニング症候群が、一部は過度の頭を使う作業の方にも影響する
脳の神経疲労から生じたものでありのかということです。
調査のため、ペシグリオーネ氏と彼の同僚は平均年齢35歳の37人の持久力のある男性アスリートを募集しました。
そして、研究の参加者は通常のトレーニングを継続するか、3週間にわたってセッションごとにそのトレーニングを40%増やすように 割り当てられました。
休憩日に行われるサイクリング運動中の身体的パフォーマンス、を2日ごとに監視しアンケートを使用しアスリートの主観での疲労の感じ方を 調査しました。
そして運動トレーニングの過負荷がアスリートにより疲労を感じさせるという証拠が示されました。
彼らはまた、標準テストでより衝動的に行動した場合の経済的な選択はどうであるのかが評価されました。ここでは即時報酬より遅延報酬を好む バイアスとして示されました。
身体的に過負荷になったアスリートの多くは、これらの経済的選択を行ったため、実行制御システムの重要な領域である外側前頭前野の活性化の 低下も示しました。
調査結果は、持久力スポーツは一般的に健康に良いが、それをやりすぎると脳に悪影響を与える可能性があることを示しています。
「私たちの発見は、神経状態が重要であるという事実に注意を引きます。脳が疲労状態にあるときは同じような決断ができません。」
とペシグリオーネ氏は言います。
これらの発見は、最高のアスリートを生み出すだけでなく、通常、意思決定に関与する神経機構のこうした変動は無視されがちな経済的な選択という点でも重要である可能性があると研究者らは述べています。
また、これは、政治や司法、または経済の領域で悪い決定が下されるのを防ぐため疲労レベルを監視することも重要である可能性があることを 示唆しています。
将来の研究では、研究者はスポーツトレーニングや頭を使う作業の間に制御を行うと、その後の作業で認知制御システムを作動させるのが難しくなる理由について調査する予定です。
将来的には、そのような神経疲労とそれによって引き起こされる結果を防ぐのに役立つ治療や戦略を見つけることが期待されています。
【以下のウェブサイトより引用】
Can excessive athletic training make your brain tired? New study says yes
Medical Xpress