遺伝学が助ける個人に適した血圧薬の予測
2019年6月25日(アメリカ心臓協会ニュース) - 高血圧、脳卒中の主な原因、心臓発作、その他の深刻な健康上の問題の治療に、薬は大きな役割を果たします。
医師が選択する薬剤の選択肢が幅広いということを考えると、どの薬が誰に最も効果的なのかを理解することは困難なものです。
しかし、この研究では、血圧薬の有効性と副作用を予測するより良い方法が見つかった鹿野政があります。
そしてそれは単に薬を服用するということではありません。それは遺伝学に依存しています。
アメリカ心臓協会(American Heart Association)の協会誌『Circulation』に発表された新しい研究において、研究者はイギリスの大規模な遺伝的データベースを利用し、
3つの一般的に使用される血圧薬 である、 ACE阻害薬、ベータ遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬を使用して標的となるタンパク質を作る方法を含んだ
特定の遺伝子を探しました。
彼らはそして、人々の遺伝子を使い、利益と危害の両面で、薬が何をするかについて評価しました。
研究者らは、人の遺伝子の特定の変動を、
心臓病や脳卒中リスクの低下に対する薬物クラスの効果と一致させることができました。
しかし、また、研究で調べた血圧薬のある特定のカテゴリーから起こりうる合併症も発見しました。
カルシウムチャネル遮断薬によって標的とされた遺伝的変異体には、「これまで報告されていなかった可能性のある副作用」がありました。
具体的には、それらは、大腸の壁に沿って小さな風船状の袋が多数できる状態である憩室症を発症するリスクの増大と関連していました。
その風船状の袋が感染したり裂けたりすると、合併症を引き起こし入院につながる可能性があります。
インペリアル・カレッジ・ロンドンの臨床研究員で主執筆者であるディペンダー・ギル博士は、
「私たちが知る限りでは、この効果は血圧とは全く関係がなく、これは研究によって生み出された非常に新しい洞察です。」
と述べました。
またACE阻害薬とベータ遮断薬は、これまで知られていなかった副作用は示しませんでした。
研究者らは、アメリカ・テネシー州のバンダービルト大学が運営するバイオバンクを通じて入手可能なDNAサンプルの1つである
別の遺伝的データベースを利用することによって、カルシウムチャネル遮断薬と憩室症との関連性を裏付けました。
世界中で推定8億7,400万人の成人が高血圧であり、それは体に変化が起きている間もめったに明白な症状を示さないため、しばし「サイレントキラー」と呼ばれます。
高血圧は通常、生活習慣の改善、具体的には食事や運動などの変化、そして1つかそうれ以上の薬の使用により治療されます。
しかし、ほとんどの高血圧薬は比較的、短期間でより高齢であるか、または高リスクの集団でテストされれたものであり、
試験で明白となった以上の明らかな副作用が見られることはありません。
「本研究の真の強みは、それが偏りのない方法で人間の健康に対する薬物療法の予期しない効果を評価することができたということです。」
と、研究には関わっていない、ペンシルバニア大学の心血管医学/遺伝学の准教授であるキラン・ムスヌル博士は述べました。
「医学界全体でその関係を疑うであろうカルシウムチャネル遮断薬と憩室症との関連性ではありませんが、最終的には関係があるかもしれません。」
「薬が人々に使用される前に、効果的かつ安全であるかどうかをよりよく理解するために薬の効果を模倣する遺伝的変異を使用するという考えは、
今後の薬の開発の際の重要な要素となるでしょう。」
しかし、ムスヌル博士は、カルシウム拮抗薬と憩室症との関連性はまだ予備的なものであり、医師や患者がカルシウム拮抗薬の使用をやめるまでには至らないと警告しました。
ギル博士はこれに同意し、次のように述べました。
「これらの薬剤は非常に有用です。医師は重要な理由を持ちそれらを処方しています。強調したのは、このことがさらなる研究と調査に役立つ情報ということです。」
ギル博士は、この研究はカルシウムチャネル遮断薬の副作用の可能性について「新しい洞察」を提供しているものの、より大きな意味合いは将来の研究で明らかになると述べました。
「現代では、遺伝データの膨大さは非常に高度で洗練された分析を迅速に行うことを可能にしています」
ロンドン・インペリアルカレッジの主任研究員であり疫学者でもあるヨアンナ・ツォラキ博士は、次のように付け加えました。
「このアプローチは、成功する可能性が高い臨床試験の優先順位付け、または開発を支援する強力で費用効率が高いツールへと進化しています。」
【以下のウェブサイトより引用】