遺伝的ツールにより1型糖尿病の細胞の原因を特定
カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部の研究者は、その遺伝的基盤をマッピングすることにより、160万人以上のアメリカ人が罹患しているという1型糖尿病における特定の細胞型の予測的因果的役割を特定しました。
この調査結果は、2021年5月19日『Nature』誌のオンライン版に掲載されています。
1型糖尿病は、インスリン産生膵臓ベータ細胞の障害と喪失、それに続く高血糖を特徴とする複雑な自己免疫疾患であり、それは、身体に損傷を与え、心臓病や失明などの他の深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。
1型は2型糖尿病ほど一般的ではありませんが、その有病率は高まっています。
米国疾病予防管理センターは、2050年までに500万人のアメリカ人が1型糖尿病になると予測しています。
現在、治療法はなく、疾病の管理のみが行われています。
自己免疫がどのように引き起こされるかを含む1型糖尿病のメカニズムはよくわかっていません。
この疾患は強力な遺伝的要素があるため、近年、研究者は、同じ病気や状態の人の全ゲノムを比較し、関連する可能性のある遺伝暗号の違いを探す『ゲノムワイド関連研究(GWAS)』が、数多く実施されています。
1型糖尿病の場合、特定されたリスクのある変異は、主にゲノムの非コード領域で発見されています。
Nature誌の研究では、カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部小児科の助教授である上級著者のカイル・ゴールトン博士とその同僚が、GWASのデータを末梢血と膵臓の細胞型のエピゲノムマップと統合しました。
エピゲノムマッピングは、遺伝子が細胞内でいつどのようにオン/オフとなるのかが詳細に示されており、特定の細胞機能に不可欠なタンパク質の産生を決定します。
具体的には、研究者は1型糖尿病の最新のGWASを実行し、520,580個のゲノムサンプルを分析して69個の新規関連シグナルを特定しました。
次に、膵臓および末梢血細胞タイプの448,142個のシスエレメント(遺伝子内または遺伝子の近くに存在する非コードDNA配列)をマッピングしました。
「これら2つの方法論を組み合わせることにより、疾患変異体の、細胞型特異的機能を特定することができました。そして、1型糖尿病における膵臓外分泌細胞の予測される因果な役割を発見し、これを実験的に検証することができました。」
とゴールトン博士は述べています。
膵臓の外分泌細胞は、小腸に分泌される酵素を生成し、そこで食物の消化を助けます。
共著者のマイケ・サンダー医学博士は、カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部の小児科および細胞分子医学の教授であり、小児糖尿病研究センターの所長です。
彼は、この調査結果は1型糖尿病の原因を理解する上で大きな飛躍を示していると述べました。
彼女はこれを「画期的な研究」と表現しました。
「その意味するところは、外分泌細胞の機能不全が病気の主な原因である可能性があるということです。この研究は、どの外分泌遺伝子が疾患の病因に関与しているのかを判断するための『遺伝的ロードマップ』を提供しています。」
【以下のリンクより引用】
Genetic tools help identify a cellular culprit for type 1 diabetes
Medical Xpress