重度の精神障害が男性では心不全による死亡リスクを高める可能性
2021年9月30日(AHAアメリカ心臓協会のニュース)- 精神障害のある人の治療方法の変更を医師へ促す新しい研究によると、重度のうつ病、双極性障害、統合失調症がある場合、心不全を起こした男性は長期生存率が悪化します。
以前の研究では、これらの精神疾患がある人々は高血圧、糖尿病、心臓病の発症が早いことが示されています。
しかし、心臓が体が必要とする十分な血液を送り出すことができない「心不全」がどういった仕組みによるものであるのかは、ほとんど知られていませんでした。
新しい研究は、9月30日にアメリカ心臓協会誌『Circulation:Heart Failure』に掲載されました。
研究者は、2002年から2017年にかけてのデューク大学保健システムから2万人以上の心不全患者を調査しました。
追跡期間中央値7年間で、重度のうつ病、双極性障害、統合失調症のある男性は、それがない男性より何らかの原因で死亡する可能性が36%高いことがわかりました。
10年間での死亡リスクは、精神障害のない男性では54.8%ですが、精神障害のある男性では64.3%に増加しました。
しかし、女性の場合は重度の精神障害の1つがある場合とない場合で死亡リスクに大きな違いは見られませんでした。
この研究では、重度のうつ病、双極性障害、統合失調症のある人は、心不全の診断時に、そうでない人よりも平均して7歳( 60歳対67歳 )若かったことがわかりました。
ペースメーカーなどの埋め込み型デバイスと心臓移植を行っていた人はその施術後の死亡率が高いことがわかりました。
この研究の筆頭著者であるクリストファー・ポルクウィアルテック博士は、医師と心疾患の専門家は、患者の精神障害をよりよく認識し、早期に予防を行う必要があると述べました。
この集団においての心不全による全体的な負担を軽減するために、ポルクウィアルテック博士は、心疾患の専門家が精神科医、心臓のリズムの専門家、および一般開業医と協力した学際的な治療アプローチについて奨励しました。
この研究は、心不全治療に関する欧米のガイドラインがうつ病の検査と治療を推奨しているものの、その他の重度の精神障害については推奨していないということを指摘しています。そのアドバイスは更新される必要があると、デンマークにあるアールボルグ大学病院の医療インターンであるポルクウィアルテック博士は述べました。
「ガイドラインでは、うつ病だけでなく、あらゆる種類の精神疾患が長期的な心臓病での予後不良と関連していることを強調する必要があります。」
と、この研究に関与しなかった臨床心理士のジェームズ・ブルーメンタール氏は、医師がより従来の心臓病の危険因子を評価することに加えて、患者の精神面の健康状態を評価する必要があることを示唆する重要な研究であると述べました。
しかし、この調査結果は答えよりも多くの疑問も残ると彼は言います。
「なぜ深刻な精神疾患が男性の心不全のリスクを高めたのでしょうか。深刻な精神疾患のある女性とない女性の死亡率に差がなかったのはなぜなのでしょうか。女性は男性よりも精神疾患での治療を受ける可能性が高かったのでしょうか。」
これらの疑問の回答を得るには、さまざまなバックグラウンドを持つ人々の代表を幅広く、複数設定しさらに調査する必要があると彼は述べました。
ブルーメンタール氏は、重度の精神障害を持つ人々の20%未満が抗うつ薬または抗精神病薬を服用していたことを考えると、この調査結果は精神疾患の状態が適切に治療されたかどうかといったの問題も提起すると述べました。
「医学的な病気である患者での精神状態の認識不足と治療不足は、より大きな注意を必要とする重大な問題です。」
と彼は述べました。
この1月に、AHAは、日常的なケアの一環としてすべての心臓病患者の精神的健康を評価し、投薬または心理療法の処方を検討するよう医師に促す科学的声明を発表しました。
「臨床医は、病気だけでなく、人全体の治療に努めるべき」と声明では述べられています。
この新しい研究は、心臓病と精神面の健康との関連に特別な注意を払う医療専門家の必要性について強調していますが、患者もまた気を付ける必要があるとブルーメンタール氏は述べました。
「精神疾患のある人とその家族は、定期的な医師の診察の重要性を認識し、自分の状態を監視し、処方されたとおりに薬を服用し、減塩食や定期的な運動といった健康的な生活を心がける必要があります。」
【以下のリンクより引用】
AHA News: Severe Mental Health Disorders May Increase Risk of Death in Men With Heart Failure
Healthday