関節リウマチ薬の一部はアルツハイマー病のリスクを下げるのに役立つのか
2022年4月12日（ヘルスディニュース）-アルツハイマー病を予防する薬の捜索において、科学者たちは、特定の関節リウマチ薬を調査しています。
予備的な調査結果は、『TNF阻害剤』として知られている関節リウマチ薬の一種が、心臓病にも罹患している関節リウマチ患者の認知症リスクを低下させる可能性があることを示唆しています。
しかし、アルツハイマー病を予防するためにこれらの薬は広く処方されていません。
この研究結果は「単に仮説を生み出すものと見なされるべき」と、研究の筆頭著者であるリシ・デサイ博士は強調しています。
彼はボストンにあるブリガムアンドウィメンズ病院とハーバード大学医学部の助教授です。
その代わりに、デサイ博士は、彼のチームが「この観察結果をさらに調査するために、多様な集団においての追加研究」が推奨されると述べました。
この研究では、2007年から2017年の期間中のある時点で、関節リウマチの治療を受けた22,500人を超える高齢のアメリカ人の認知症リスクを調べました。
研究参加者は、関節リウマチ薬の3つのクラスの1つを服用していました。
それは、JAK阻害剤（トファシチニブ）、IL-6阻害剤（トシリズマブ）、またはTNF阻害剤です。
これらの薬剤はすべて、衰弱性関節リウマチの症状を引き起こす種類の炎症を阻害します。
調査後、TNF阻害薬だけが認知症を発症するリスクが低いことがわかり、その効果は、心臓病を患っている関節リウマチ患者の間でのみ確認されました。
このクラスの薬には、レミケード（インフリキシマブ）、エンブレル（エタネルセプト）、フミラ（アダリムマブ）、シムジア（セルトリズマブペゴル）などがあります。
この報告は、4月8日にJAMA Network Openでオンライン公開されました。
「関節リウマチの生物学とアルツハイマー病の生物学との間にいくつかの関連性が見られました。しかし、これらは複雑な疾患であり、その関連性は完全には理解できていません。」
とアルツハイマー病協会の医学および科学関係担当副社長であるヘザー・スナイダー氏は述べています。
協会はこの研究には関与していませんでした。
「必ずしも驚くべきことではなく、これらの新しい発見は興味深いものであり、今後、研究者が認知症リスクの変化を探す際のポイントであることを示しています。」
と彼女は付け加えました。
TNFとは、 tumor necrosis factor（腫瘍壊死因子）の略で、炎症を引き起こし、関節リウマチなどの免疫系障害を引き起こす可能性のあるタンパク質です。
認知症の予防においてその潜在的な利益は、効果的なアルツハイマー病の薬のドラッグリポジショニング（DREAM）プロジェクトとして知られているイニシアチブの一部として調査されました。
この研究に参加した患者は65歳以上でした。
20％弱がJAK阻害剤で関節リウマチの治療を受けており、4分の1強がIL-6阻害剤の投薬を受けていました。
残りの半分強は、TNF阻害薬が投薬されていました。
研究者らはまず、T細胞活性化阻害剤（アバタセプト）として知られる第4選択の関節リウマチ治療薬と比較して、3つの薬剤クラスのそれぞれが認知症のリスクにどのように広く影響するかを調べました。
研究チームは、以前に行った独自の調査で、この4番目の選択薬では認知症対策ができないことが分かっていると述べました。
そして今回、当初、3つの薬剤クラスのいずれかとアルツハイマー病や認知症のリスクが低いこととの関連性は発見されませんでした。
しかし、その後の分析で、特に心臓病を患っていて、かつTNF薬を服用している関節リウマチ患者の間で認知症のリスクが低いことが示唆されました。
TNF薬を服用している患者の約13％には心房細動の既往歴があり、またほぼ15％には心不全、約9％は脳卒中の既往歴がありました。）
この関連性を説明する可能性のあるものに関して、デサイ博士は心臓病自体が認知症を発症するリスクを高めると述べました。
しかし彼は、TNF薬が一部の患者の認知症リスクを低下させる正確なメカニズムは不明であると述べました。
スナイダー氏は同意しました。
「関節リウマチ薬がどの集団にとっても、効果的に認知症の発症リスクを低減する治療薬であることを示唆する十分な証拠がありません。」
と彼女は述べました。
「しかし、私たちはこの分野での研究を継続し、また、そういった人々へはアルツハイマー病の臨床試験への参加呼びかけを検討することを勧めています。」
【以下のリンクより引用】
Could Some Rheumatoid Arthritis Meds Help Lower Alzheimer's Risk?
Healthday