院内で拡散する下痢の原因となる細菌

科学者は、腸内感染菌であるディフィシル菌が2つの異なる種に進化していることを発見しました。

そのうちの1つの種類は病院での感染拡大が非常にしやすい菌です。

ウェルカム・トラストサンガー研究所、ロンドンスクールオブハイジーンアンドトロピカルメディシンの研究者と共同研究者は、新たに出現した種の遺伝的変化は、砂糖を豊富に使用する西洋食で繁殖し、一般的な病院の消毒剤での消毒効果もなく簡単に広がることを確認しました。

衰弱性の下痢を引き起こす可能性があるそれらの菌について、研究者らはこの新興種が、数千年前に現れ始め、そして、ディフィシル菌感染の3分の2以上を占めていると推定しました。

本日（8月12日）にNature Genetics誌で公開されたディフィシル菌の史上最大のゲノム研究は、バクテリアがどのように新種に進化するかを示し、　　ディフィシル菌が人間の行動に応じて進化し続けていることを示しています。

この結果は、病院での患者の食事と細菌感染予防の管理に役立つ可能性があります。

ディフィシル菌は腸に感染する可能性があり、世界中の抗生物質関連の下痢の主な原因となっています。

健康な人で抗生物質を服用していないのであれば、腸内にある数百万の「善玉細菌」がディフィシル菌を抑圧します。

しかし、抗生物質は通常体のにいる腸内細菌を一掃し、人の体を腸内のディフィシル菌の感染に対して脆弱にします。

これは治療が難しく、腸の炎症や重度の下痢を引き起こす可能性があります。

病院の環境下でよく見られるディフィシル菌は耐性の胞子を形成するため、人の体内で容易に広がり、体内環境に大きな負担をかけます。

この細菌がどのように進化しているかを理解するために、研究者たちは、人間、犬、豚、馬などの動物、および環境から分離されたディフィシル菌の906株を収集して培養しました。

研究者は、各株のDNAの配列を決定し、すべてのゲノムを比較分析することで、ディフィシル菌が現在2つの異なる種に進化していることを　　　　　　　発見しました。

第一著者であるウェルカム・トラストサンガー研究所のニティン・クマール博士は次のように述べています。

「大規模な遺伝子分析により、ディフィシル菌が現在、病院環境での広がりに特化した1つのグループで新しい種を形成していることがわかりました。

この新興種は、何千年も前から存在していましたが、この方法でディフィシル菌のゲノムを調べて同定したのはこれが初めてです。

この特定の細菌は、病院という場所ができるずっと前に、現代の医療慣行と人間の食事を利用できるように準備されていました。」

研究者は、『ディフィシル菌クレードA』と名付けられたこの新興種が、病院の患者からのサンプルの約70％を構成していることを発見しました。

単糖を代謝する遺伝子に変化があったため、研究者はマウスにおいてディフィシル菌を研究し、新たに出現した株が、食事の中に砂糖が豊富に　　　なったときにマウスによく定着することを発見しました。

また、胞子の形成に関与する遺伝子の違いも進化し、一般的な病院の消毒剤に対する抵抗力がはるかに大きくなりました。

これらの変化により、医療機関内という環境でより簡単に広がります。

年代測定分析により、『ディフィシル菌クレードA』は約76,000年前に最初に出現しました、これの異なる株の数は、現代の病院が設立される前の　　　16世紀の終わりに増加し始めたことが明らかになりました。

それ以来、この一種は、適応と進化を続ける多くの株となり病院の環境下で繁殖してきました。

著者の1人であるウェルカム・トラストサンガー研究所のトレバー・ローリー博士は次のように述べています。

「私たちの研究は、人間のライフスタイルが細菌を駆り立てて新しい種を形成し、より効果的に拡散してしまうというゲノムおよび実験室ベースでの　　結果を提供しています。

ディフィシル菌の株は、現代の食生活と医療システムに対応して進化を続けており、食生活に焦点を合わせること、新しい消毒剤を開発することが　　この細菌との戦いに役立つ可能性があることを明らかにしています。」

著者の1人である、ロンドン・スクール・オブ・ハイジーン・アンド・トロピカル・メディシンのブレンダン・レン博士は、次のように述べています。

「世界33カ国から収集したディフィシル菌の全ゲノムでのこれまでで最大の分析により、最近進化について、まったく新しい理解が得られ、　　　　　　　　細菌のゲノム監視の重要性が明らかになりました。

最終的に、このことは、その他の危険な病原体がどのように人間のライフスタイルや医療制度の変化に適応し進化するかを理解するのに役立ち、　　医療政策に情報を提供することができます。」

【以下のウェブサイトより引用】

Science Daily