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JapanRx / 難病を救った『イベルメクチン』 私たちの健康を守る偉大な「微生物の働き」とは?

難病を救った『イベルメクチン』 私たちの健康を守る偉大な「微生物の働き」とは?

難病を救った『イベルメクチン』 私たちの健康を守る偉大な「微生物の働き」とは?

今月5日、2015年のノーベル医学生理学賞を、日本の大村智・北里大特別名誉教授ら3名が受賞したことが発表されました。大村氏(および米のウィリアム・キャンベル博士)の受賞理由は、「寄生虫によって引き起こされる感染症の治療の開発」。70年代から各地で土を採取して微生物を分離・培養していた大村氏は、静岡県のゴルフ場周辺の土壌にいた新種の菌から、寄生虫に効果のある抗生物質「エバーメクチン」を発見した功績が評価されたとのことです。

このエバーメクチンをもとに開発されたのが、「オンコセルカ症(河川盲目症)」や「リンパ系フィラリア症(象皮病)」などを引き起こす寄生虫の駆除薬として普及した「イベルメクチン」。世界中で10億人もの人々を寄生虫病から救ったといわれている特効薬も、もとは土の中で微生物たちが生産していた物質だったんですね。

 

*土壌微生物の働きとは?

実は1グラムの土のなかには、約1億の微生物が存在するといわれており、その種類にも細菌(バクテリア)やカビなどさまざまなものがあります。ちなみに、大村氏が発見した「エバーメクチン」を生産していたのは放線菌といわれる微生物です。

こうした土の中の微生物のおもな働きは、さまざまな生物の死骸や枯葉などを分解し、二酸化炭素などのガスや水、植物の成長に必要な養分に変えることであり、自然界はこうした微生物なしでは成り立ちません。

また、近年では、こうした微生物の働きを利用して、化学肥料のかわりに、環境を汚さない有機物を利用する農法や、化学物質で汚染された土壌を再生する研究も進められています。また、農作物の栽培で使われる「よく肥えた土」という言葉には、「より多くの微生物を含む土地」という意味合いもあるとのことです。

 

*微生物と抗生物質の関係

ところで、大村氏が発見した抗生物質「エバーメクチン」においては、病気の原因となる線虫などの神経系を麻痺させる一方で、哺乳類の神経系には影響しないという特性が、寄生虫病の特効薬に利用されたとのこと。抗生物質といえば、病院や薬局で処方されるものというイメージがありますが、抗生物質の定義は「微生物が産生する物質のうち、他の微生物の発育を阻害する物質」。

もともとは、微生物由来の物質を指す言葉だったものが、近年では化学合成された物質にまで適用範囲が広がった言葉だったんですね。

 

*人間の体内の微生物は100兆以上

こうした抗生物質を人間のさまざまな症状に対する薬として用いる場合、上記のエバーメクチンの例のように、基本的には「人体には無害」とされる特性を生かしたものとなります。しかし、抗生物質を不用意に服用すると、腸内細菌のように人間の健康のために必要な微生物まで一掃してしまうケースもあるため注意が必要です。実は人間の体内にいる微生物の数は100兆を超えるともいわれており、こうした微生物の精妙なバランスによる働きが、日々の健康維持には密接に関わっているのです。近年では、腸内フローラ(腸内細菌叢)のバランスを改善する微生物が「プロバイオティクス」として注目を集めていますが、心身の健康のためには、ときに体の中で活躍してくれている微生物たちに思いを馳せてみることも大切なのかもしれませんね。

参照記事:Mocosuku