2つの部族での研究:西洋スタイルの生活が血圧に与える影響
ジョンズ・ホプキンス・ブルームバーグ公衆衛生学校の研究者による研究では、西洋の食生活の影響がなく、ほぼ完全に隔離された南米の部族では、1歳から60歳まで平均血圧の上昇は示しませんでした。
これと比較して、近隣部族の食生活には塩分が高い加工食品などによる影響のため、中年以降、血圧が上昇することがわかりました。
米国および他の多くの国では、年齢とともに血圧が上昇し、それは人生の早い段階から始まります。
この研究の結果は、食事が欧米化された社会において、血圧が年齢と共に上昇する傾向が、老化の自然な部分ではなく、西洋の食生活および生活習慣による累積的な影響から生じる可能性があるという考えを示しています。
この研究は、11月14日の『JAMA循環器病学』誌に掲載されています。
「高血圧が発生するのは加齢のためであるという考え方は、心臓病においては広く知られていますが、我々の知見は、高血圧が、老化自体ではなく、西洋の食生活や生活習慣を回避することで可能であるという証拠を強調しています。」と、ジョンズ・ホプキンス・ブルームバーグ公衆衛生学校の疫学助教授で、公衆衛生学修士であるノエル・ミューラー博士は述べています。
研究者らは、1歳から60歳までの、72人のヤノマミ族の人の血圧測定を行い、参加者が高齢化するにつれて、より高いまたはより低い測定値の傾向がないことを見出しました。
研究者らはまた、近隣のイクワナ族の83人の血圧も測定しました。この部族は食事を含んだ西洋の影響を、より受けており、この群では年齢が上がるにつれてより血圧も上昇するという明確な傾向を見出しました。
ヤノマミ族はブラジル北部とベネズエラ南部の遠方の熱帯雨林地帯に住み、狩猟採集や造園業などをして暮らしています。
彼らは脂肪と塩分が低く、果物や繊維質の多い食事をしています。
1980年代以降のヤノマミ族の成人においての研究では、アテローム性動脈硬化症、および肥満は、事実上、確認されておらず、年齢とともに平均的な血圧は著しく低いことが明らかになりました。
この新しい研究は、ヤノマミ族の血圧の安定性が幼児期に始まることを明らかにしています。
地理的には同様の場所にあるものの西洋の食生活やその他の西洋の生活様式の影響を受けていたイクワナ族とヤノマミ族を比較するのは初めてです。
ベネズエラ南部にあるヤノマミ族の人々の血圧を調べた研究者らは、彼らが収縮期平均95(mmHg)、拡張期63(mmHg)であることを発見しました。
(ちなみに米国の成人では、平均収縮期平均は122、拡張期平均は71です。)
ヤノマミ族のこの低い数字は、ヤノマミ族の成人においての先行研究と一致していますが、研究者たちは、ヤノマミ族の子供たちにも同様に血圧を測定しました。
実際、このデータは、この集団においての血圧は、1歳から少なくとも60歳までは同じ低水準であり、増減傾向はないことを示唆しています。
ヤノマミ族とは対照的に、イクワナ族は工業化された世界との交流や貿易を通じて、加工食品を含む西洋の生活様式や食生活の影響を受けてきました。
最も低年齢層ではヤノマミ族の血圧とほぼ同じでしたが、年齢が進むにつれてレベルが上昇するという統計的に明確な傾向がありました。
イクワナ族の平均血圧レベルは、10歳では5.8mmHg、50歳では15.9mmHg高く、1年でおおよそ約0.25 mmHgヤノマミ族のそれより高くなりました。
この年齢に関連した血圧の上昇は、小児期(幼児期)に始まります。これは、幼児期が血圧の上昇を防ぐためのライフスタイル介入の「絶好の機会」になる可能性があることを示唆しています。
これらの知見を脈絡として、米国においての、収縮期血圧は男児と女児で年にそれぞれ約1.5mmHg、1.9mmHg、成人では毎年0.6mmHg上昇しています。
ミューラー博士らは、ヤノマミ族とイクワナ族の腸内細菌の研究により、腸内微生物が、2つの部族の血圧の違いを、年齢とともに説明するかどうかを調査する予定です。
【以下のウェブサイトより引用】