C型肝炎の最新治療…副作用少ない新薬登場
C型肝炎の新薬が相次いで承認され、従来のインターフェロン注射を中心とした治療法が様変わりしつつある。薬が多様化する中、どのように治療を選べばいいのだろうか。
国内のC型肝炎ウイルスのキャリアー(感染者)の数は約150万人。古くはウイルスが特定される前の輸血や注射針の使い回し、近年は入れ墨などが感染原因とされている。初期にはほとんど症状が出ないため、自分が感染していることを知らない感染者が約30万人、ウイルス検査で感染がわかっても約70万人が継続的な受診をしていないとされる。感染し続けると、肝臓組織が破壊と再生を繰り返して硬くなる「線維化」が進み、肝硬変や肝がんに悪化するリスクが高まっていく。
C型肝炎ウイルスは、1型、2型などのタイプに分かれ、国内の感染者は1b型が70%、2a型20%、2b型10%とされる。1型、2型とも、インターフェロンの注射と飲み薬「リバビリン」などとの併用で、8~9割の患者でウイルスが除去できるようになった。しかし、インターフェロンでは発熱や吐き気などの副作用が出やすく、持病があって使えない患者も多い。
最も多い1b型には昨年秋、「ダクラタスビル」「アスナプレビル」という新しい飲み薬を組み合わせる治療が保険適用になった。ウイルスが持つ酵素の働きを抑える作用があり、治験(臨床試験)では86%でウイルスが消えた。
ただ、特定の遺伝子に変異があると治癒率が約4割に下がる。治療に失敗した場合、薬剤耐性ができて、同じような作用の別の薬が効かなくなる恐れも指摘されている。
このため、日本肝臓学会は、この2剤を使う時には事前に遺伝子検査をするよう推奨している。遺伝子検査は保険適用にはなっていないが、販売元の製薬会社は1月から、検査費を全額補助している。肝障害などの副作用で治療が中止される例も出ており、副作用をチェックできる肝臓専門医を受診することが重要だ。
1型の治療では、現在、「ソホスブビル」と「レジパスビル」の合剤が国に承認申請中。今秋までに使えるようになる見通しだ。C型肝炎ウイルスの遺伝子(RNA)に結合して、RNAの複製を抑える。国内で行われた治験には、インターフェロンが効かなかった人や持病で使えない人、軽度の肝硬変患者も参加。全員が治癒し、副作用も比較的少なかった。日本肝臓学会の治療指針では、現時点で肝がんになるリスクが低い患者は新薬が出るまで待つ「治療待機」を選択肢に挙げている。使えるようになり次第、指針を変更する方針だ。
「ソホスブビル」は、2型の治療薬としても3月に国に承認され、近く保険適用になる見通しだ。2型の場合、「リバビリン」と併用。治験では96%が治癒している。
欧米では「ダクラタスビル」などによる治療は治癒率が低いとして、ほとんど行われていない。山梨県立中央病院理事長の小俣政男さんは「『ダクラタスビル』などが効かなかった患者に薬剤耐性ができてしまい、『ソホスブビル』が効かないという事態も想定し得る」と指摘。専門医に相談の上、より治癒率の高い薬が出るまで「治療待機」とするのも一つの選択肢だ。
情報元 http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/
(2015年5月7日 読売新聞)